ニューウェーブ漫画相談室

マニアック目な漫画感想ブログです 読んだ漫画一覧はこちら http://booklog.jp/users/satsuma0122

皆さん、来月も漫画を読みましょう。私生活に影響が出ない範囲で。


10/03 『とんかつDJアゲ太郎(4)』(小山 ゆうじろう/イーピャオ)


最近そこら中でコラボ広告等を見かけるようになったとんかつDJ。
作風も題材もサブカル寄りの作品だと思うんだけど...大手出版の力は偉大。


10/06 『古屋兎丸初期短篇集 禁じられた遊び』(古屋 兎丸)


兎丸の初期短編集というだけで嫌な予感がするのに、タイトルも狂気の香り。
初期短編集は作風の模索とかが感じれる場合が多いので楽しみ。


10/07 『或るアホウの一生(1)』(トーテムポール)


ヒバナの創刊号で目についた、個性派将棋漫画。
主人公のキャラクタが非常に良い。すごく良いアホウ。


10/09 『花とアリス殺人事件』(道満 晴明/岩井 俊二)


道満先生が原作付きで漫画描くと聞いて、どうなるもんかとハラハラしてたら、
いつも通りの道満漫画。原作読んでないけど多分、原作に忠実じゃない。


10/09 『応天の門(4)』(灰原 薬)


平安時代の朝廷が舞台の探偵物、だと思ってたけど最近はサスペンス要素強め。
歴史物と探偵物の組み合わせはユニークだけど、バランスが難しそう。


10/09 『重版出来!(6)』(松田 奈緒子)


漫画製作現場のパッションを熱く描く職業物。
グラビアから装丁まで周辺の人々も色々描いてきたけど、次は何かな。


10/09 『アルスラーン戦記(4)』(荒川 弘/田中 芳樹)


アニメは無事に終わったのか荒川先生の戦争物。
戦争物といっても軍略とかよりも、個の力でごり押す展開中心だけど。


10/13 『涙雨とセレナーデ(1)』(河内 遙)


10/13 『リクエストをよろしく(1)』(河内 遙)


河内先生の新作ということで作家買い。内容は全く知らない。
『関根くん』はスゲー好きだったんだけど、今回はどうかな。


10/13 『ちはやふる(29)』(末次 由紀)


競技かるた漫画も29巻。刊行ペースの早さは素晴らしい。
が、Kindle化がワンテンポ遅れる作品なので微妙に話題に着いていけない。電子派の辛いところ。


10/15 『秋津(2)』(室井 大資)


まさかの続刊。室井大資によるクレイジーな父親相手に常識的な息子が頑張るギャグ漫画。
ギャグのテンポが軽快で良い。


10/16 『だがしかし(3)』(コトヤマ)


アニメ化も決定して絶好調の駄菓子ギャグ漫画。
kindleはどうせ出るの遅れるけど気長に待とう。


10/19 『プリマックス(2)』(蒼木 雅彦/柴田 ヨクサル)


柴田ヨクサル原作の、カワイイの星を目指す男子高校生の話。
絵柄は違うのにヨクサル節全快で、ホントに狂ってる。


10/23 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3)』(竜田 一人)


原発作業員によるレポ漫画の最終巻。
原発への意見等どうこうは色々あるだろうが、純粋にレポ漫画としてクオリティ高い。


10/23 『先生の白い嘘(4)』(鳥飼 茜)


とにかく読んでて重い気持ちになるジャンダーの不平等を題材とした作品。
怖いもの見たさで毎回楽しみにしてる。今回はどんなエグいエピソードが来るか。



 歴史上、権力を持ちどんな願いも叶う立場にありながら、人格が伴わず自由奔放に権力を振りかざす王が沢山いたことだろう。裸の王様のイメージである。王程度ならまだよかっただろうに、今作の主人公の「かおちゃん」は全知全能の神であり余計にタチが悪い。

 p14
p14より引用 全知全能の神「かおちゃん」 見た目は普通の可愛い女性。

 かおちゃんは全宇宙どころか平行宇宙も含めた全世界を統べる神であり、全ての宇宙の情報を知り自分の思うように世界を作り変える力を持っている。

p136
p136より引用 様々な宇宙の報告を聞くことが「ご公儀」とのこと。

p116
p116より引用 「友達が欲しい」という願いを叶えるため友達を創るかおちゃん。

 そんな全知全能の神であるかおちゃんだが、「とっても退屈」(p17より引用)しているらしく、公儀をサボって人間界に遊びに行ったと自由気ままに行動する上、言動もコロコロ変わるため、配下は振り回されっぱなしである。失敗を犯した時間軸ごと切り取ったりと、神の力を使ってやりたい放題。スケールの大きい、愚君と言える。全知全能の神でありながら人格が伴っていないというのがアンバランスで面白い。

p115
p115より引用 かおちゃんは非常に直情的。それに振り回される配下。


p88
p88より引用 気に入らない時間軸の切除なども可能なよう。

 そんなかおちゃんが恋に落ちたところから物語は始まる。しかも恋の相手は神などではなくただの人間である。名前は鮫島晃一(通称こうちゃん)。こうちゃんと一緒にいたいかおちゃんはあの手この手(神の力)を用いてこうちゃんと一緒になろうとする。だが、上手くいかない。全知全能の神の願いなのになんで?
p13
p13より引用 鮫島晃一(こうちゃん)。かおちゃんの意中の相手。

p100
p100より引用 すっかり恋する乙女のかおちゃん。神なのに。

 作者である野田彩子の前作『わたしの宇宙』を読んだ方なら「鮫島晃一」の名前と容姿に覚えがあるだろう。それもそのはず、前作や他の野田彩子作品にも鮫島晃一は何度か登場している。スターシステムなのか。しかし、『わたしの宇宙』の中での鮫島晃一の役割は非常に特殊であった。漫画の登場人物が自分自身が漫画の登場人物であると自覚するという漫画メタ漫画でる『わたしの宇宙』の中で、鮫島晃一は意のままに世界を操る存在として登場し、思わせぶりな言葉を吐き退場していく。さながらメタの代弁者である。それでは、今回の鮫島晃一はどうなのか。

p128
p128より引用 神の予想の外を行く鮫島晃一。何者なのか。

 ここで一つの仮説を提唱したい。それは前作『わたしの宇宙』と今作の設定が部分的にリンクしている説である。そして鮫島晃一は「漫画のキャラクター」として作品内に配置されている、と私は予想する。鮫島晃一はスターシステムの登場人物の一人として、全知全能の神であるかおちゃんの恋愛の相手という役割を持って作品内に配置されている「キャラクター」ではないのか。「漫画のキャラクター」であるがゆえ、死んでも蘇るし、何度でもかおちゃんの目の前に現れる。鮫島晃一は自分がキャラクターであることを自覚しているが、自由奔放な神の相手という役割が嫌になっている。その結果が、「おれはただ、普通に生きて普通に死にたいだけだ。」「ひとつの社会に溶け込んで。」(p149より引用)というセリフに出てきているのではないか。そして、漫画の世界をかおちゃんは恐らく知覚できていない。全知全能の外側に、メタの世界が広がっている。
 あくまで一つの仮説で多分間違っている。ただ、前作では一筋縄ではいかないメタ構造で読者を楽しませてくれた野田彩子なので、今作も予想の斜め上を行くストーリーを期待している。できれば、かおちゃんに幸あれ。




先月の漫画感想総括。相変わらずツイッターの感想の羅列。

読んだ総数41冊。先月の100冊ごえからの落差は大きいが、まぁ通常営業はこれくらい。まぁこれを毎月でだいたい年間500冊ペース(既に464冊)。

先月一番面白かったのは『宇田川町で待っててよ。』。新刊じゃないけど。葛藤のあるBLで非常に好み。今月は他にもBLとか百合とかその辺に頑張って手を出した。『エトランゼ』シリーズとか『加藤さん』シリーズとか。元々恋愛物は好きで、BLも百合もまぁ根本は一緒なので、これからも色々挑戦していきたい。

連載作品の新刊で面白かったのは、『とんかつDJアゲ太郎』とか『ダンジョン飯』とか『リューシカ・リューシカ』とか『ちはやふる』あたり。安定。『私を連れて逃げて、お願い』は前の巻から非常に伸びた。良い。

新刊以外だと、『愛の時間』は素晴らしかった。いい漫画だった。キンドルのセールでたまたま買ったけど、こういう出会いも大事だなぁ。

以上。来月も良い漫画と出会えますように。













































 

買いたい新刊漫画まとめ。
来月は多いなぁ。待ちに待ってた作品もちらほら。

09/04『4ジゲン(4)』(にざかな)



『B.B.JOKER』コンビによる、40か月ぶりの新刊。
あんなに原作者と作画の仲悪いのに細々と続いてるなあ。

09/04『亜人ちゃんは語りたい(2)』(ペトス)



最近の人外漫画ブームに乗っかった感ある作品。
他漫画との違いは画面の面白さではなく会話で勝負しようとしてるあたり。

09/04『帝一の國(12)』(古屋 兎丸)



kindleで11巻出たのが最近なのに、もう12巻出るのか。
刊行ペースはえー。

09/07『甘々と稲妻(5)』(雨隠 ギド)



あったか家庭料理ホームドラマ。
私が今、一番楽しみにしている漫画の一つ。超楽しみ。表紙最高過ぎる。

09/08『ベルリンは鐘(2)』(ニャロメロン)



でたな鬼才ニャロメロン。
連載は追ってるんだけどまとめて読めるの楽しみ。

09/08『実は私は(13)』(増田 英二)



チャンピオンの看板ドタバタラブコメ。
12巻で失速感あったが、盛り返せているのか。

09/11『たそがれメモランダム(2)』(田村 茜)



ノスタルジックな雰囲気漂う女子高生日常物。
各話で雰囲気が違って、ちょっと空灰っぽい。

09/14『ヒナまつり(9)』(大武 政夫)



サイキッカーとヤクザによるギャグ漫画。
まさか9巻まで続くとは......

09/23『白馬のお嫁さん(2)』(庄司 創)



産める男子によるSFギャグラブコメ。
SF設定が非常にユニークで作りこまれていて良い。

09/25『WEB版 WORKING!!(3)』(高津 カリノ)



09/25『三月のライオン(11)』(羽海野 チカ)



衝撃のラストだった10巻からどう動いたか。
すげー楽しみだけど、多分電子版は同時発売じゃないな......

09/26『変身!(2)』(横山 旬)



ユニークな絵柄のドタバタコメディ。
いかにもビームらしい。灰汁の強い漫画。

09/27『孤独のグルメ(2)』(久住 昌之/谷口 ジロー)



ホントに出るのか2冊目。
表紙も出てるし、出るんだろうけど。

09/30『トクサツガガガ(4)』(丹羽 庭)



隠れオタクOLによるオタク生態漫画。
刊行ペースはえーよー。

09/30『夕空のクライフイズム(6)』(手原 和憲)



独特のノリの高校サッカー物。
これも刊行ペースはえー。電子版同時に出してくれー。 



 漫画は日本においては最も裾野が広いメディアだと思われる。大手だけでも月刊1000冊程度の単行本が出版されており、加えてインターネット媒体の普及により表現の場はさらに広がっている。膨大な量の漫画が世に出て行っていることは、それだけ多様かつニッチなニーズに対応する作品が生み出されているということでもある。
 ただ、ここで浮上してくる問題として、題材がマニアックなだけでは対象の顧客が手に取ってくれないことが上げられる。まず、根本的に作品の知名度が足らないこともあるだろうし、題材がどストライクだとしてもそれ以外の要素ではじかれる場合もある。少しでも多くの人の目に触れて、届いてほしい顧客へと知れ渡り、一定数の読者を確保しなければならない。さらには、興味がなかった層にも魅力を伝え、潜在的な顧客を増やしていく必要もある。そのためにも、手に取ってもらうための工夫が必要となる。

 今回紹介する作品の題材は「爬虫類飼育」である。学習漫画のような丁寧な描写で爬虫類の生態や飼育方法について説明されている。爬虫類の造形に関する描写も、写実的な絵とキャラクタ化された絵がうまく使い分けられており、興味がない層にも爬虫類の魅力が伝わりやすいように工夫がなされている。

p30
p30より引用 飼育描写は非常に丁寧。

p41
p41より引用 おまけページ。作者が解説するのが学習漫画っぽい。


p90
p90より引用 爬虫類を知らない人にも魅力的な造形描写。

 ただ、爬虫類という題材、一定数の支持者は存在するだろうが、苦手な人はとことん苦手というジャンルと思われる。その苦手な層にも手に取ってもらうための工夫として登場するのが、表紙に描かれているヒロイン、由莉である。大人びて物怖じしない女子小学生という設定の彼女は、シャープな絵柄とキャラクタ造形がマッチして非常に魅力的に描かれている。

p20
p20より引用 ヒロインの由莉。美少女小学生。

 マニアックな題材の作品に美少女をセットで出してキャッチ―にしようとする試みは他の作品でも多数見受けられる。ただ、本作のユニークなところは、メインの題材と美少女を同列として扱い、さらには性癖として比較しながら描かれているところである。
 本作の主人公である裕也は爬虫類性愛(オフィディシズム)である。爬虫類飼育漫画を描くだけなら、ただの爬虫類好きの青年でも設定上良かったはずだが、敢えて特殊性癖とした理由には、同じく特殊性癖であるロリコンと対比させる狙いがある。裕也はオフィディシズムを「特殊な性癖」(p6)と自覚しながら、「俺は俺自身にロリコンじゃないことを証明する!!」(p64)とロリコンであることは否定しようとする。爬虫類の交尾をビデオで撮りながら性的興奮を感じる描写がある一方で、由莉の姿を想像しながら自慰行為にふける場面もある。直接的な性描写を交えつつ、二つの性癖の間で板挟みになっている様子が対比的に描かれている。

p66
p66より引用 由莉が性的に描かれる場面も多い。各話表紙とか。

 対比の極め付けは本作のタイトル『マドンナはガラスケースの中』である。爬虫類と由莉、どちらも過度なスキンシップは禁止である。ガラスケースの中の存在であり、触れてはいけない対象でなければいけない。少なくとも裕也の中では、その線引きがされているはずである。
 由莉も裕也に惹かれていっており、恐らく二人の恋愛物としても物語は進んでいくのであろう。その際に裕也が二つの性癖に対してどのように葛藤し、解決していくかが作品のキモとなる。作者の手腕に期待。

p158
p158より引用 ここだけ見ると、普通の恋愛物っぽい

 (あくまでオタクカルチャーの中において)ロリコンはメジャーなジャンルだが、爬虫類好き(もしくはオフィディシズム)は非常に少数派であろう。本作はマニアックな題材を扱う際により多くの顧客を獲得するため、メジャーな性癖とセットで売るというユニークな方法をとった。ニッチなジャンルを狙う漫画が話題だけで終わらずに継続的に売れるためには、題材だけに胡坐をかかずに、それ相応の工夫をし新規層を開拓する必要がある。


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