簡潔な物語が好きだ。素晴らしい一つのテーマがあるのならば、物語にごちゃごちゃとした装飾は必要ない。そのテーマを生かすためだけにストーリーは構成されるべきだ。無理に他の要素を詰め込もうとすると、受け手の意識が逸れて物語全体の印象が薄まってしまう。テーマがきっちり一貫した作品は、最初から最後まで物語に集中できてすっきり読むことができる。そういう意味では本作のテーマは非常にシンプルでわかりやすい。「二人きりの世界」だ。
主人公のミヤコは、物語の冒頭から他の生物が全くいない街をさまよっている。人を探してさまよっているうちに、一匹のフラミンゴ「オンノジ」と出会う。そのフラミンゴは人の言葉を喋り、自分はもともと人間だったと話す。その出会いがあり、ミヤコとオンノジはたった二人の人類として、無人の世界で寄り添って生きていく。まず、ガールミーツフラミンゴという発想の時点で勝っている感はある。しかしそれより何より、不純物を排除した舞台の作り方が素晴らしい。
基本的には四コマ漫画形式で作者独特のシュールギャグが展開されていく。しかし、各話の最後の四コマには、毎回シリアスな話が配置されている。シュールギャグパートではお気楽な二人が、悲壮なほどに世界の現実を突きつけられる。ただ、その最後のコマでは「二人である」ことが描かれる。希望のない世界で自分が一人ではないという確認。
そのような流れは物語終了まで続く。一定のリズムで話は進んでいく。わき道にそれず無駄な設定や展開はない。必要最低限どころか必要以上に物語の装置は削られている。
物語途中でミヤコが記憶喪失であることも明かされるが、その設定は生かされない。それはささいなことなのだ。無人街の設定も突き詰めれば色々と現実的に苦しいところはある。ただ、そこも全く問題ではない。オンノジは元人間のフラミンゴだが、フラミンゴである理由は明記されない。なんでもいいのだ。サルだろうがトカゲだろうが。作品で描きたかったのは「二人きりの世界」。全ての舞台装置は、寄り添いながら生きる二人を描くためだけに構成されている。シンプルに、一貫して一つのテーマを描き切った作品だと思う。