BLや百合などの性的マイノリティを題材とした作品を読む際にいつも私が気にしているのが「同性である必然性」についてだ。勿論、純粋に男同士、女同士の恋愛が好きという意見もあるだろうが、そこには例えば自分がマイノリティであることに対する葛藤や同性同士ならではの性的な問題点等がなければ、「そのネタなら異性カップルネタでもできるよね」と感じてしまう。わざわざマイノリティを描くなら、それ相応の物語が欲しくなる。
今回紹介のは百合漫画だ。そして大きく扱っているテーマは普遍的な恋愛の要素である。では、百合の居場所はどこか。
本作の主人公、小糸侑は恋愛に憧れているが恋をしたことがない、誰も「特別」と思えないことに悩んでいる。
p32より引用。主人公、小糸侑は恋愛に憧れている。
p34より引用。恋を知らないことに悩む侑。
そんな侑の前に同じ境遇の人間、七海燈子が現れる。燈子もまた人を好きになったことがないということがわかり、侑は自分と同じ悩みを持つ人間に出会えたことに喜ぶ。
p20より引用。登場当初は、燈子もまた恋愛を知らない。
ただ、侑が予期せぬ方向に物語は進む。燈子が、侑のことが好きだ、と言い始めたのだ。
p46より引用。燈子が侑のことを一方的に好きになってしまう。
未だに恋愛を知らない侑と、初めて人を好きになった燈子。侑は自分の知らない感覚を知った燈子に嫉妬し羨望する。燈子から様々なアプローチを受ける侑だが、それでも侑にとって燈子は「特別」にならない。先輩として燈子を慕いはしても、恋愛感情は芽生えない。
p101より引用。燈子に先を越されたと感じる侑。
1巻の時点では侑はまだ恋愛を知らない。この作品はタイトルからもわかるように、侑が恋を知り燈子の立場になるまでを描いていくことになるのだろう。恋愛漫画の第1話で主人公が誰かを好きになるまでの過程を丁寧に描くようなものだ。恋愛未満を描く恋愛物語というユニークな題材を上手く描いている。
ただそこで気になるのが百合の必然性だ。少なくともこれまでのストーリーだと、同性カップルでなくても成立する題材である。 個人的な願望だが、今後百合を活かした展開が欲しい。
そこで次の展開を予想してみる。ポイントは勿論百合だ。
恐らく侑は男性相手に恋愛感情を抱くのではなかろうか。燈子が侑に抱く同性への恋愛感情はマイノリティであり、侑は大多数の人々と同様の道を辿る。タイトル通り「やがて君になる」のだが、恋を初めて知った際の相手は燈子ではない。恋愛感情抜きに慕ってきた燈子からの好意に対して侑はどのように折り合いをつけていくのか。
というストーリーを予想してみた。勿論、恐らく違う展開になるだろう。というか、自分で書いててあんまり盛り上がらなさそうである。ただどちらにせよ、これまで恋愛漫画としては十分面白い作品にはなっているので、今後は百合を活かした物語になることを望む。
生徒会劇の復活が2巻からの軸になるらしいので、劇をなぞることで疑似恋愛(メタ的作風には進まないと思うのですが)を通過するのではと予想していたら、連載中の最新号では全く違うベクトルへ向かいつつあり、読者の予想を裏切りつつ展開するのだろうなと感じ始めています。
いずれにしても、あれこれと先を想像しては、してやられたと頁をめくってしまう。そんな作品が思わぬ所からみつかり、日々の楽しみが増えました。