pp. 4-5より引用。インパクトのある見開きから物語は始まる。
「性欲にまつわる罪悪感について」という非常にユニークなテーマの作品。
性欲とは何か、真実の愛とは何か、そして誰のためのものか。
主人公の針辻真は「性欲は悪」と決めつけ、
性欲がない自分こそが真実の愛を知るものだと主張する。
性欲を持つ人間、すなわちほぼ全ての他人を軽蔑し否定する。
p. 62より引用。主人公の針辻真。性欲を愛ではないと否定する。
p. 17より引用。自分には性欲がないと言い張る針辻。
そんな針辻だが、自らの秘書である南雲七海を運命の相手として
何度もプロポーズし、全て断られている。
針辻の言う「真実の愛」を南雲は信じていない。
結果として、針辻は誰にも相手にされないまま
独りよがりの「真実の愛」を叫び続ける。
自分の純潔のみを誇りとする彼は単なるナルシストである。
p. 13より引用。針辻の秘書、南雲。針辻とは幼少期からの付き合い。
p. 149より引用。針辻のプロポーズをまともに相手しない南雲。
そんな針辻の前に、A子と名乗る幽霊が現れ彼に取り付く。
A子の呪いにより針辻は自分の中の性欲を抑えられなくなる。
性欲の否定という彼のアイデンティティは崩壊する。
お得意の自己愛さえなりを潜め、ネガティブな思考に支配される。
p. 30より引用。針辻に取り付く幽霊のA子。性的な言動で針辻を誑かす。
p. 90より引用。性欲に囚われ妄想を繰り返すようになる針辻。妖怪じみている。
p. 140より引用。性欲の否定を前提としていた針辻の「真実の愛」は崩壊する。
自分が信じてきた「真実の愛」を否定され、
自分自身がわからなくなった針辻は南雲に問う。
真実の愛なんてものはないのではないか。
自分の生き方は間違っていたのではないかと。
p. 165より引用。「真実の愛」と性欲、どちらに支配されているかわからなくなる針辻。
pp. 180-181より引用。針辻は南雲に問う。「真実の愛」などないのではないか。
針辻の、自己愛ではなく他人に向けられた愛の問いに、
南雲は初めて誤魔化さずに答える。「いいえ」と。
さんざん否定され続けた「真実の愛」の存在を肯定されることで針辻は何とか立ち直る。
今までのような独りよがりのものではない、
他人と共有するための「真実の愛」を探すために彼はスタートラインに立つ。
pp. 182-183より引用。「真実の愛」を否定しない南雲。
ここからは個人的な邪推。
このページ最初の画像と最後の画像は、
針辻と南雲が入れ替わっただけで全く同じ構図となっている。
自己愛の塊で他人に対して全く興味のない表情で質問をする針辻と、
初めて他人へ愛を問いかけた針辻を肯定する南雲が対比する形で描かれている。
今作は意味深なセリフが多かったりと
まだまだ未回収の伏線があり今後のストーリーは読めない。
今後、針辻がどのような形で性欲と「真実の愛」の間の答えを出してくれるか、楽しみである。