『鬼太郎』シリーズに代表されるように、日本の創作において妖怪は身近な存在である。近年においても妖怪を題材とした作品は多く発表されている。そしてどちらかというと、人間に害をなす恐ろしい存在というよりも、キャラクタ化された人間に近しい関係が描かれることが多いように思う。
本作はそんな妖怪を「人間の心の代弁者」として描いた作品である。 


本作は妖怪が人間と共存するとある町を舞台にしたコメディ作品だ。妖怪といっても人に害するものではなく、困った人をほっておけないなまはげや、年寄り扱いされるのが嫌な猫又、家ではなく人に寄生する座敷童などコミカルで人間臭いキャラクタばかりでユニークである。


p5
本編p 5より引用。困った人をほっておけないなまはげ。


p40
本編p 40より引用。年寄り扱いをされるのが嫌な猫又。


p52
本編p 52より引用。家ではなく人に寄生する座敷童。


画面の構成は3コマおよび4コマ漫画が主体で描かれる。また、本編通してフルカラーであり、キャラクタの感情表現がコマの色で演出されたり、吹き出しの色がキャラごとに決まっていたり、暖色多めの色使いであったかい雰囲気が表現されたりと、カラーを最大限に利用している。


p110
本編p 110より引用。コマごとに色分けがされておりキャラクタの感情表現に一役買っている。
 

p34
本編p 34より引用。全体的に暖色が多めであったかい雰囲気。


さて、本作の妖怪達だが、人間臭い、というところがキーポイントとなる。
 
妖怪達は皆、人間に積極的に関わっており、見方によっては人間よりも人間に興味を持って接している。他者を助けたい、他者から愛されたい、他者と一緒にいたい…なまはげが「オラたち妖怪は」「人の心から生まれるんだ」(p 133より引用)と作中で話しているように、妖怪達は人間の、純粋な心そのものの理想像を示した存在なのだろう。その証拠に、p 133で新卒は「私も...」「なまはげさんみたいになりたいです」と呟く。

妖怪との交流を経て、新卒は人助けをするようになり、ねこ好きは自分の趣向に素直になり、新卒とアラサーは一緒に暮らし始める。人間の成長のために一役買う、やさしい妖怪達の物語である。


いい百鬼夜行
川西 ノブヒロ
講談社
2016-06-24