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「キャラクタ」と「キャラクタ」の出会いだけでなく、
「読者」と「キャラクタ」の出会いを演出している作品だ。 

舞台はあらゆる「人捜し」を請け負う探偵社。
依頼人から相談を受け、失踪した老人、一目惚れした男性、身元不明の少年など、
人々の痕跡を辿っていき尋ね人を捜しあてるまでを描いた作品となっている。

各話において物語の終盤にならなければ捜し人は登場しない。
その人物の私物や依頼人の話などから
徐々に捜し人に関する情報が集まっていき、
捜し人が登場することで初めて「出会い」が起こる。
想像や二次的な情報しかなかった尋ね人の輪郭がしっかりと定まる。
そのような「出会い」を丁寧に過程を踏んで描く演出は巧みだ。


特に第二話「キー局のアナウンサー」が
物語全体の構成、キャラクタ、演出どれもとっても秀逸。
その話を少し掘り下げて解説と考察してみる。

キー局の看板アナウンサーが自宅に帰ってこず、
仕事の時間が迫っても家に帰らない。
今までこんなことはなかったと両親は探偵社に捜索を依頼する。
両親の話や私物などから捜し人の真面目でスキのない人柄がわかってくる。
同時に、産みの母親と秘密のやり取りをしていたことも明らかになる。
産みの母親の入院する病院に捜し人がいるのではと疑い、探偵は病院に急ぐ。

キャラクタである「探偵」が情報を集めると同時に
「読者」自身も描写を読み捜し人を想像する。
優等生で完璧な経歴を持ち両親と良好な関係を保ちながら、
産みの母親会いたいという気持ちも捨てきれない。
TV画面や写真の中では笑顔でほほ笑む彼女は
実際会うとどんな表情をして、どんな風にしゃべるのだろうか。
読者の中で、捜し人のイメージだけが先行していく。

p. 92, 93ページの見開きにて、「読者」は
「捜し人」と初めて顔を合わせる。
白い背景にキャラクタだけを描くことで、
キャラクタを強調し純度の高い出会いが演出されている。
声をかけて振り向いた姿は、地味な服装と髪型ながら、
肉親の遺体を前に凛とした表情で佇んでおり美しい。
その後の対応も落ち着いており丁寧。
「読者」の中で捜し人のイメージが収束する。
探偵が彼女を好きになったように「読者」も
彼女の魅力を出会ったことで感じ取る。

そんな中で描かれる彼女の普段と違う姿、
探偵の一言により漏れる自然な笑顔と、
産みの母との別れを思い涙する場面。
これは実際に出会っている「探偵」は
見ることができなかった「読者」の特権だろう。