電子書籍導入に踏み切れない漫画好きのために情報をまとめました。
 電子書籍漫画の定義が曖昧ですが(WEBコミックは電子書籍漫画か?読み放題サービスは?など)、本記事では「従来の単行本媒体が電子媒体に移行したもの」を主に電子書籍漫画として取り扱います。

 以前、私のツイッターアカウントでとった電子書籍使用状況アンケート(こちらの記事で結果をまとめております)にて、「紙の本が好きなので電子書籍には移行しない」というスタンスの方が結構いました。私は2014年ごろからほぼ完全に紙の本から電子書籍に移行し、kindleの漫画蔵書数が2018年4月現在、2900冊超えております。個人的な意見としては、電子書籍は漫画読みにとって便利なものなのでもっと皆に使ってほしい。

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電子書籍アンケート結果一部

 そこで、電子書籍の導入を促進するために、電書のメリットデメリットや導入手順などの情報を以下にまとめます。あくまで、漫画読みという観点で。紙の本派の漫画読みの方は参考にして頂けますと幸いです。


1.電子書籍のメリットとデメリット

 初めに電子書籍のメリットデメリットを紹介します。電子書籍推進派の私の主観となりますが、きっちりデメリットの方もお伝えします。

<メリット>

a) 保管スペースがいらず整理も楽
 本の収納スペースに悩まされることや定期的な本棚の整理も必要なし。「久しぶりにあの本が読みたい」と思った時にも検索すればすぐ取り出せる点も大きいです。

b) いつでもどこでも本が買える、読める
 本屋にいなくても自宅や出先でも田舎でも海外であろうと、ネット環境さえあれば簡単に本が買えます。気になる本の情報をメモらなくても検索してすぐ購入(もしくはショッピングカートに入れておく)が可能です。
 また、読む場所が限定されないのも電子書籍の良いところです。移動の際に重い紙の本を持ち運ばなくてもスマホやタブレットがあれば電書は読めます。またアカウントを登録すれば複数端末で同じ電書を読むことができるため、移動中はスマホ、出先ではタブレット、家ではPC、などの使い分けも便利です。

c) 目当ての本を探す手間がいらない
 初版部数が絞られている昨今の漫画業界において、マイナー作品を本屋で見つけることが難しくなってきています。Amazonなどのネット書店でも品切れ、なんて話もしばしば聞こえてきます。電子書籍ならどんなマイナー作品でも配信されてさえすればすぐに読めます。在庫切れはありません。

d) セールによる割引がある
 日本においては「再販制度」という法律により基本的に本の値引きは禁止されています。一方で電子書籍にはそのような制限がなく、普通に購入する分にも紙の本より数%値段が安い作品が多いです。また、各マーケットで頻繁に「ポイント還元」セールが実施されており、一般的には10%程度、中には50%以上のポイント還元が設定される時もあります。紙の漫画よりかなり安く楽しめます。

e) 見開きやカラーページが最大限楽しめる
 紙の本と感覚が違って読みにくい…というイメージを電子書籍に対して抱かれている人もいるかと思いますが読む上でも電子書籍にメリットはあります。例えば漫画の見開きについて、2ページ表示に対応した大型タブレットやPCで読めばシームレスに迫力がある大画面が見開きページが楽しめます。作品によっては見開きのページの切れ目が処理されていないものもありますが、どちらにせよページを綴じる方(ノド)に邪魔されず見開きが楽しめます。

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『北北西に曇と往け(1)』(入江亜季)より画像引用。切れ目のない美しい見開き。

 またカラーページについても、紙の本では白黒のページが電書ではカラーになっている作品も最近増えてきました。紙ではコストの問題で中々難しい、本の中盤にカラーを挟む演出もあったりします。

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『ブルーピリオド(2)』(山口つばさ)より画像引用。本の途中でカラーページを差し込む演出。


<デメリット>

a) 紙の本独特の装丁や質感が楽しめない
 日本の漫画本は特殊加工や装丁に拘ったものが多いですが、電子書籍ではそこは流石に再現されません。カバー裏のおまけなんかも現状は大部分のコミックで収録されていないです(こちらは技術的に可能なので出版社に頑張って頂きたいですが…)。紙の質感やめくる感覚が好き、という人にとっても電子書籍は移行しにくいものかもしれません。

b) 電子端末がなければ読めない
 電子書籍はそれを読むための電子端末がなければ読めません。大半の人が持っているスマホでも読むことは可能ですが、漫画を読むならばある程度画面の大きなタブレットやPCなどの端末が欲しいところ。全ての人がそれを持っているわけではない事が電子書籍の普及を妨げる一つの要因のように思います。

c) ライセンス商品なので実物が手に入らない
 大半の電子書籍サービスで購入した漫画はPDFなどの汎用的なファイル形式ではないため、そのマーケットの専用アプリなどを通してしか読めません。電子データという実態のないものであり、その漫画を読む「権利」を買っているだけです。コレクター欲の強い方は紙の本を本棚に並べて満足感を得る方もいるでしょうし、そういう方には電子書籍は物足りないものかもしれません(そんな人に配慮して、買った電子書籍の背表紙を本棚のように並べるサービスもあります。詳しくは2章参照)。また、もしそのサービスが終了した場合、今まで買った漫画を読めなくなるリスクを伴います。加えて、紙の本と異なり手軽に他人と貸し借りしたりすることも難しいです。

→(2018.4.15追記)ライセンス商品って何?という方には下記URLの記事が分かりやすいです。

電子書籍は「なぜ」消えるのか?--世間にはびこる俗説を斬る

DRMの問題は我々ユーザーサイドでは如何ともしがたいので配信側の対応を待つばかりですが、知っておくべき情報としては「これまでの電子書籍サービス撤退の例でも、ポイントによる全額返金や他サービスへの移行が行われてきた」ということです。買った電子書籍が一瞬にして無に帰す、ということは今後も起こる可能性は低いかなぁと思われます。


d) 電子書籍で出版されない漫画もある
 2018年4月現在、大手出版社から出る新刊漫画の殆どは紙の本と電子書籍どちらも販売されていますが、小規模な出版社が出すマイナー作品などは電書化されないものもあります。また古い作品でも人気作は順次電書化していっている一方で、2010年前後より以前に出版された作品で売れる見込みのないものは電書化されない可能性が高いです。

e) 電子決済でなければ購入できない
 各電子書籍サービスを通して電書を購入することになりますので、クレジットカードやそのサービスのポイントなど電子決済での支払いとなります。言い換えれば現金が使えません。b)で述べた端末の問題と合わせて、中高生への電子書籍コミックの普及を阻む大きな要因と予想されます。

 以上、大まかにではありますが漫画を電子書籍で読む上でのメリットデメリットをまとめました。以上を踏まえると、下記のような層は電書を導入することをオススメします。


<電子書籍はこんな人にオススメ>

1) 沢山漫画を購入する人(特に新刊中心に)
 手軽に買える、省スペース、整理が楽、ポイントによる実質割引(まとめ買いセールなんてのもあり)などなど、ヘビーな漫画好きほど電子書籍導入によって受けられる恩恵が大きいです。新刊中心に読む人ならば電子書籍が発売されないデメリットもほぼないです。

2) 地方や海外在住者
 私自身も2018年4月現在、車がないと生きていけないようなド田舎に住んでおりまして、近くに本屋はない、数少ない本屋にはメジャー作品しか並べられない、しかも物流の関係で発売日から数日遅れでしか買えない、と紙の本派には過酷な環境ですが、幸いにも私は殆どの漫画を電子書籍で購入しておりますので地方のデメリットを感じたことはありません。
 また、昨年3か月ほど仕事の関係で海外に滞在していたのですが、ネット環境さえあれば新刊は電子書籍で配信されますので不便は感じませんでした。むしろ、日本時間24時に配信される新刊が時差の関係で20時頃に配信されたため、発売日前日(実際は違うけど)に新刊を読めるお得感が味わえました。

3) マイナー作品好き
 大手出版社はドル箱の人気作品を猛プッシュして幅広く展開し、儲からない作品は初版部数が減らされる昨今の漫画業界において、例え本屋に紙の単行本が並ばなくても購入できる電子書籍はマイナー作品を応援する上で大変便利です。また、紙の本では採算が取れないため電子書籍限定で出版される作品も最近はあります。出版社を通さなくても、作家さんが自費出版で電子書籍を販売するケースも増えてきました。ニッチなニーズに応じてありとあらゆるジャンルの作品が発表される現代の漫画業界を最大限楽しむためには電子書籍導入は必須と言えるかもしれません。

 以上が電子書籍のメリットとデメリットでした。あくまで私から見た大まかな情報ですので、興味が出た方は各自で調べて頂きたいです。


2.電子書籍環境の選び方

 電子書籍のメリットデメリットは理解して使ってみたいけど、イマイチどうやればいいかわからない…という人のために電子書籍環境の選び方を解説します。電子書籍導入、意外と最初の下準備が肝心です。電子書籍を使い始めた後に「やっぱり別のサービス使えばよかったー」と後悔しても、既に買ってしまった電書は他サービスに移行するのが難しくて泣く泣く自分に合わないサービスを使い続けている人も沢山います(私も最初に何となくkindleを選んで、それ以降メインでずっと使っていますが、他のサービスのユーザーさんが羨ましくなることもしばしば...)。最初にしっかり調べて自分に合った電子書籍環境を整えることで快適に電子書籍を楽しみましょう。


電子書籍サービスを選ぶ

 まず使う電子書籍サービスを選びましょう。2018年4月現在、世の中に沢山の電子書籍サービスが乱立している状態です。単行本を売る形式の大手電書サービスでは取扱書籍のラインナップは殆ど横並びなんですが、一部取り扱ってない出版社があるサービスもあります。またUIの使いやすさやポイント還元、独自サービスなんかも選ぶ際のキーとなるかと思います。

 主要な電子書籍サービスの特徴を紹介します。選定の参考にして頂ければ幸いです。ただ、あくまで私の主観でまとめた情報ですし、ここで紹介する以外にも電子書籍サービスは存在します。各自、自分で調べましょう。

※注意:本情報は2018年4月現在のものです。電子書籍サービスの内容はかなり早いスピードで変化していきます。特に、ポイント還元率など割引については今後も同じということは考えにくいです。ご注意下さい。


1) kindle
kindleロゴ

・運営母体はAmazon。
・最大手、No. 1シェアで安心感はある。
・専門書や洋書などの漫画以外の書籍も含めれば取扱点数は圧倒的首位(多分)。漫画では使わないけどテキスト読み上げ機能もある。
・電子ペーパーを採用した専門端末である『kindle』シリーズがある(②にて紹介)。
・漫画家が個人出版で作品を発表する場合(KDP)はだいたいココ。
・「1-Click 注文」ができる。
・支払いにAmazonポイントが使える。
・フォルダ分けできない、シリーズがまとめられないなどUIが不親切。

→(2018.4.15追記)androidやiOS、kindle端末ではフォルダ分けできるみたいですね。PCのみ非対応...PCメインで使うユーザーとしては早く対応してほしいなぁ。

・ポイント還元は他サービスと比較して控えめ。


2) ebookjapan
ebookjapanロゴ


・運営母体はYahoo! JAPAN系列。
・漫画に特化した電子書籍サービスで他の書籍のラインナップは控え目。漫画に関しては個人出版の作品以外はkindleとほぼ同等。

→(2018.4.15追記)永井豪と石川賢とか横山光輝など、一部の漫画家作品はebookjapanのみ配信しているようです。名前を見る限りベテラン作家ばかり。昔の漫画を読むんだったらkindleよりebookjapanの方が有利かも?

・買った作品の背表紙を表示する機能など漫画好きに配慮したUI。

ebookjapan背表紙
購入した電子書籍の背表紙表示例。ebookjapan公式ツイッターより引用。

・ポイント還元はそこそこの頻度。kindleよりは多い。まとめ買いセールや新刊予約でポイント5倍還元などもあり。


3) honto
hontoロゴ

・運営母体は大日本印刷とNTTドコモ、丸善CHIホールディングスの合弁会社。
・漫画ラインナップは他と同等。
・電子書籍と紙の通販を融合したマーケットの構成が特徴的(kindleも同じだけど)。
・丸善やジュンク堂、文教堂という大型書店と提携しており、共通のポイントが使える。
・100冊まで30%OFF、40%OFFというクーポンが結構な頻度で配布される。今後、運営方針が変わるかもしれないが、現状で一番安い電書サービスと思われる。
・読書管理サービス『ブクログ』と連携。買った本がそのまま『ブクログ』に登録される。


4) kobo
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・運営母体は楽天。
・漫画ラインナップは他と同等。
・電子ペーパーを採用した専門端末である『kobo』シリーズがある(②にて紹介)。
・支払いに楽天ポイントが使える。
・ポイント還元はそこそこの頻度。kindleよりは多い。20~30%オフ。


電子端末を選ぶ

 次に電子書籍を読む電子端末を選びましょう。電子端末は大きく分けて4種類、1)スマートフォン2)小さめタブレット(電子ペーパー端末含む)3)大きめタブレット4)PC、となっています。使用する場所やシチュエーション、予算に合わせて選びましょう。また、たいていのサービスでは、複数端末でアカウントを登録すれば同じ電書を読むことができるため、移動中はスマホ、出先ではタブレット、家ではPC、などの使い分けもできます。


1)  スマートフォン(画面サイズ5インチ程度)
 皆持っているため一番利用しやすい端末。携帯性が最大のメリットで、移動中や出先等どんな時でも空き時間に漫画が読めます。ただし、メイン端末にするにはちょっと画面が小さすぎるので、他の端末との併用がオススメです。

2)  小さめタブレット
(画面サイズ6~7インチ程度、漫画1ページ表示)

 片手で持てるサイズのタブレット。こちらも比較的小さいので持ち運びやすく長時間の移動の際などに重宝します。自宅でも寝転がりながら使いやすいサイズ。ただし、漫画の表示は1ページが基本となります(2ページ表示も設定でできますが極端に小さくなる)。漫画の電書がパワーを発揮する見開きを楽しむならばもう少し画面が大きいサイズの端末を選びましょう。

 ちなみに『kindle』『kobo』など一部サービスが扱う電子ペーパーの独自端末もこのサイズ。電子ペーパー端末の特徴としては下記の通り。

・バックライトを使わず目に優しい。
・同サイズのタブレットと比較して軽い(200 g程度)。
・比較的安価(kindle paperwhiteマンガモデルで15,000円程度)。
・電池の持ちがいい(数週間程度は充電なしで持つ)。
・白黒表示。
・ページめくり後に、前に表示したページの残像が若干残る。

kindle paperwhiteマンガモデル
参考画像:kindle paperwhiteマンガモデル(Amazon.co.jpより画像引用)


3)  大きめタブレット
(画面サイズ9~10インチ程度、漫画2ページ表示)

 両手で持つような大きめのタブレット。基本的には机の上に置いての使用になるかと思います(角度をつけられるスタンドがあると便利)。持ち運びするにはでかいし片手で持つのも困難ですが、最大のメリットは何といっても大画面。少年漫画なんかだと、紙の単行本よりも大きなサイズで画面の細部まで漫画を楽しむことができます。


4)  PC(画面サイズ14インチ以上、漫画2ページ表示)
 意外と盲点となっている選択肢。多くの電子書籍サービスがPC利用に対応しています。画面サイズも自由自在ですし、何かPCで作業している合間に電子書籍で漫画を楽しむ(もしくはその逆)などの使い方ができます。
ちなみに私は14インチのタブレットPCをメイン端末として使っています。1 kg程度ですので意外と持ち運べて外出先のカフェなんかでも使えますし、自宅に帰ってもそのままPC兼漫画読み端末として使用しています。便利です。


電子書籍を買って読む

 電子書籍サービスを選んで電子端末を準備すれば、電子書籍を楽しむ環境は整っています。各自、好きな漫画を購入しましょう。紙と違って買っている感覚が薄いため買い過ぎ注意です。気が付いたら積読がたまっていく...


3.漫画媒体の今後について

 以上、漫画読みに向けての電子書籍導入の手引きでした。

 私の持論ですが、現在の漫画業界における作品の多様性を今後も維持していく上で電子書籍の普及は絶対条件と思っています。物流が制限される紙の本からニッチなユーザーにも作品を届けやすい電書への移行はマイナー作品にとって助け舟となるはずです。現状の漫画業界の裾野の広さを享受している漫画好きな方こそ電子書籍に移行して欲しい。
 勿論、紙の本はなくなることはないでしょう。紙の本と電子書籍、共存していくことになるかと思います。ただ、ユーザー割合は今後どんどん電書に傾いていくでしょう。出版社としても電子書籍へのソフトランディングへ向けた動きがあちこちで見られます。ユーザーとしては紙の本と電子書籍、使いやすい方を選べば良いのですが、環境自体が電書に傾く世の中です。雑誌の電子媒体への移行や単行本の電書限定化など、紙の本派はいつの間にやら取り残されてる可能性もあります。

 紙の本派の皆様、慣れ親しんで愛着があることも理解できます。ただ、食わず嫌いせず一度、電子書籍も触ってみて下さい。使い始めてみれば意外と違和感ありませんよ。