
最近(2018年入ってから)完結巻が出た作品に良いものが多かったのでオススメをご紹介。
元来、私は短い漫画が好きです。
長い漫画が楽しめないわけではなんですが、何十巻にも及ぶ作品は読むのも集めるのも大変なので中々手を出す気になれません。その点、短い漫画は良いです。短編集は合間の時間なんかを利用してちょこちょこ読め進めれますし、単巻完結作品も1時間もあれば一気に読み終えることが出来るので気軽です。ただ、短編集や単巻完結だと長さの制約上、どうしても描ける題材が限定されます。
そんな単巻や読み切りで描きにくい題材に対して、全5巻前後というのは凄くの丁度いい長さと私は思います。ストーリーのボリュームとしては2時間映画のイメージ。半日あれば読破できるので休日一気読みできます。全巻揃えても2、3,000円でお財布にも優しい。また、これは私の主観ですが、5巻前後で完結する作品は物語構成に蛇足がなくまとまっている印象です。人気のない作品はすぐ打ち切られる、人気が出た作品はいつまでもダラダラ続く、そんな例が多い昨今の漫画業界。そんな環境の中で全5巻前後で完結する作品というのは、作者の構想の通りにストーリーが進み、予定通りの結末で綺麗に物語が閉じらる、そんな幸福なケースが多いように思います(あくまで「割合が多い」くらいのイメージです。単巻完結や長期連載でもまとまった美しいストーリーの作品は山のようにあります。逆もまたしかり)。
2018年に入ってから最終巻が刊行された作品で、そんな「全5巻前後で綺麗に完結を迎えた」ものが沢山ありましたので、その中のオススメを10作品ほど紹介します。気になるものがありましたら、大人買いして休日などに一気読みしましょう。
(紹介は発売日順)
『ムシヌユン』(都留泰作)(全6巻)
沖縄の離島を舞台に、キモい青年に命運を握られた人類を描いた銀河規模のSF作品。
エロやギャグ、ホラーなどが入り混じるカオスな雰囲気は圧倒的オリジナリティ。

『ムシヌユン(1)』より画像引用。様々な要素が雑然と入り混じる異様な作品。
『ファイアパンチ』(藤本タツキ)(全8巻)
読者どころか登場人物さえ、急展開の連続に思考が追いつかないダークファンタジー。
物語全体で構成が練り込まれており、巧みな伏線の張り方に思わず唸らされる。

『ファイアパンチ(2)』より画像引用。登場人物さえついていけない展開のスピード感。
『燐寸少女』(鈴木小波)(全6巻)
妄想が具現化する燐寸を手にした人々それぞれの顛末を描くダーク御伽話。
レトロで幻想的な画面表現とズシリと心の奥に響く物語が素晴らしい。

『燐寸少女(1)』より画像引用。レトロでオシャレな画面表現が素敵。
『あれよ星屑』(山田参助)(全7巻)
戦後の東京を舞台に、辛い記憶を引きずりながらも逞しく生きる人々を描いた作品。
骨太な題材ながらコミカルとシリアスのメリハリが効いており読みやすい。

『あれよ星屑(1)』より画像引用。人間臭いキャラクタ描写が魅力的。
『少女終末旅行』(つくみず)(全6巻)
人類が滅んで巨大な都市だけが残る世界を旅する二人の少女を描いた物語。
スケールの大きな都市の残骸描写と二人の少女の独特な価値観がユニーク。

『少女終末旅行(1)』より画像引用。退廃的な雰囲気と少女二人のミスマッチが面白い。
『ライアーバード』(脇田茜)(全4巻)
音が「見える」少女と頑固な少年、不器用な二人が音楽を通して繋がる物語。
音の共感覚を画面で表現した描写力は圧巻。クセの強いキャラクタ達にも拘りを感じる。

『ライアーバード(1)』より画像引用。「音」を見る表現に対するバリエーションが豊富。
『リウーを待ちながら』(朱戸アオ)(全3巻)
ある伝染病が蔓延し隔離された地方都市を舞台にしたパンデミックサスペンス。
リアリティのある医療描写とエッジの効いたエンタメ性が高い次元で両立している。

『リウーを待ちながら(1)』より画像引用。リアリティある展開は緊迫感満載。
『鉄腕アダム』(吾嬬竜孝)(全4巻)
宇宙から飛来する「蝶」と戦う心を持ったヒューマノイドが主人公のハードSF。
エンタメ性の高い序盤から壮大なスケールの終盤まで密度の濃い作品。

『鉄腕アダム(1)』より画像引用。スタイリッシュで独特なデザインセンスも本作の魅力。
『4分間のマリーゴールド』(キリエ)(全3巻)
触れた人の死の瞬間が見える救急救命士の男性と血の繋がらない妹との恋愛を描いた作品。
キャラクタ、伏線、メッセージ性を全て過不足なく物語に盛り込んでおり素晴らしい。

『4分間のマリーゴールド(1)』より画像引用。切なげな絵柄も題材とマッチしている。
『偶像事変~鳩に悲鳴は聞こえない~』(にんじゃむ/ミサヲ)(全4巻)
特殊な刷り込み教育プログラムをテーマにしたサイコサスペンス。