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 2024年2月読んだ漫画をまとめます。


 2月に読んだ漫画は58冊。先月同様、昨年は基準にしていた60冊を切ったけど、まぁ50冊超えればいいかくらいの感覚。

 以下で読んだ中のオススメ作品をピックアップします。


『逃げ上手の若君(14)』

生きる英雄と殺す英雄、北条時行と足利尊氏の生死を賭けた鬼ごっこを描く物語。
史実の人物が松井優征作品らしい変態に仕上げられており登場するキャラクタが皆魅力的。歴史イベントも上手くアレンジした上でストーリーが組み立てられている。


『放課後ひみつクラブ(4)』

エキセントリックな少女と冷静な少年が学園の秘密を探るコメディ。
構図や吹き出し、漫画表現などを駆使した画面で繰り広げられるコメディ描写はハイテンポで楽しい。パワフルなキャラクタが暴れまわった結果、ストーリーもフリーダムになってきた。


『魔々勇々(1)』

人間と魔人が共生する平和な世界において存在意義に悩む勇者の少年が主人公の物語。
読者をかき回すトリッキーなストーリー構成や王道を逆手に取ったユニークな世界観、コマ割りなどを活用した斬新な漫画表現に拘りを感じる。作画も丁寧で安定感がある。


『BEAT&MOTION(3)』

かつてアニメ制作の夢を諦めていた青年がある女性との出会いから再び夢と向き合う物語。
クリエイターの特有の悩みや葛藤がドラマティックなストーリーの中に上手く組み込まれている。キャラクタの感情の機微を表現する表情演出や画面効果も力強い。


『氷の城壁(9)』

人と距離を取りがちな女子高生含む男女グループ4人組の交流を描く物語。
友人と恋人の違いなど思春期らしい人間関係の悩みが解像度高く描かれており素晴らしい。大きく動き出したメインキャラ達の関係がどの方向に向かうか予想がつかず緊迫感がある。


『税金で買った本(10)』

ひょんなことから図書館で働くことになったヤンキー少年が主人公の物語。
やっかいな同僚のやる気を引き出す方法や更生への期待、公共サービスに対する横柄な利用者、など図書館業務が現実感を持って描かれておりお仕事物として優秀。


『これ描いて死ね(5)』

漫画を読むのが大好きな少女とその仲間達を描く漫研部が舞台の物語。
デッサンの重要性やキャラクタ作りのコツなど漫画技法の要素も交えつつ高校生達の青春が真正面から描かれている。巻末の漫画家話も本編と違った世界の漫画創作話で興味深い。


『江口さんはゲーム脳(1)』

エロゲ―が趣味の女子高生と幼馴染男子との妙な関係を描いたラブコメディ。
エロゲ―をベースにしたド下ネタの妄想で頭がいっぱいになり暴走する主人公が滑稽で面白い。版権ネタのオマージュが一部カラー作画で差し込まれる演出もユニーク。


『ザ・キンクス(1)』

小説家の父親と専業主婦の母親、娘と息子の4人家族の日常を描いた作品。
人間味溢れるキャラクタ達の交流が温かな雰囲気で心地よい。奇想天外な榎本俊二世界の片鱗はあるものの下ネタはなく、ダイナミックな漫画表現のみに活かされているのも興味深い。


『琥珀の夢で酔いましょう(7)』

京都の客足の少ない小料理屋をクラフトビールで盛り上げようとする人々を描く物語。
各キャラクタに課せられる試練が重く心理描写も丁寧なため身につまされる。試練の重さゆえにそれを乗り越えていくキャラクタ達の姿からは力強さを感じ取れる。


『J⇔M ジェイエム(2)』

女子小学生と身体が入れ替わってしまった殺し屋の奮闘を描いたコメディ。
バカバカしい設定に振り回されるキャラクタ達のドタバタ感や顔芸はコメディとして腕力が強い。アクションシーンも色々な工夫や作者の試行錯誤が感じ取れて興味深い。


『極東事変(6)(完)』

戦後日本を舞台に半不死身の人間兵器達とGHQとの争いを描くアクション物。
武器や車両のディテールや戦後日本のきな臭い雰囲気、躍動感溢れるアクションシーン、ハードボイルドな決めコマや画面など、随所に作者の拘りが感じ取れる作品だった。


『司書正(2)』

膨大な書の情報を暗記した抜け殻のような男を中心に繰り広げられる古代中国宮廷劇。
トリッキーにキャラクタが動くユニークな設定と重厚な宮廷政治の駆け引きが上手くかみ合っており読みごたえがある。多様なキャラクタも的確に配置されておりよく練り込まれている。


『われわれは地球人だ!(2)(完)』

宇宙空間を旅するショッピングモールとそこに閉じ込められた女子高生3人を描く物語。
地球とは全く異なる文明や価値観を持った星々の設定にはバリエーションがあったし、主人公三人が絆を深めながら旅をしていくストーリー構成も素敵だった。


『よふかしのうた(19)』

不眠症の少年と吸血鬼の少女との夜の街を舞台にした不思議な交流を描く物語。
本作独特の吸血鬼設定が十分生かされたストーリーはどう転ぶかわからない緊迫感がある。そんな物語も次巻でいよいよ完結。主人公二人の関係性がどのような形になるのか楽しみ。


『白山と三田さん(9)』

田舎に住む地味な高校生カップルのちょっと変な交際の様子を描いた作品。
本作ならではのヘンテコなコメディの雰囲気と二人の成長と強い信頼関係を感じさせるエモーショナルな描写が入り混じって独特の雰囲気。次巻完結。どんなオチになるか楽しみ。


『凪のお暇(11)』

空気を読み過ぎる自分に嫌気がさして仕事を辞めたアラサー女性の無職生活を描いた作品。
人間の多面性や感情の振れに関する描写が巧み。コメディとシリアスの混在した雰囲気も独特で楽しい。メインの人間関係も次巻以降で大きく動いていきそうな雰囲気。


『ここは鴨川ゲーム製作所(2)(完)』

会社を辞めた美大出の女性を中心に人々が集まりゲームを作る様子を描いた作品。
多様な悩みを抱えたキャラクタ達がゲーム制作という場を通して緩くつながり心を支え合う様子が素敵。絵柄同様、ストーリーもファジィで主張し過ぎないのが心地よい。


『ドッグスレッド(2)』

夢が潰えたフィギュアスケータの少年がアイスホッケーに舞台を移して戦う物語。
癖が強めでエネルギッシュなキャラクタ達が魅力的。二つの高校の対立構図に震災というセンシティブな要素を絡めてどのようにストーリーを進めていってくれるか楽しみ。


『田沼殿と源内さん~ときどき徳川ファミリー~(1)』

稀代の政治家・田沼意次と天才発明家・平賀源内が主人公の江戸時代ギャグ。
歴史物にもかかわらず、ヒューマノイドやダンジョンなど好き放題な要素を詰め込んだごった煮感のあるストーリーは荒唐無稽でインパクトがある。


『付き合ってあげてもいいかな(12)』

勢いで付き合い始めた大学生二人のすんなりいかない関係を描く百合恋愛物。
想い合いながらもすれ違いが大きくなり別れていくカップル達の描き方が痛いほどにリアル。キャラクタ心理の作り込みや描写力が非常に高い作品。


『女甲冑騎士さんとぼく(1)』

気高い女甲冑騎士とネットに毒されているオタク男性との同居生活を描いたコメディ。
インターネットに毒されて堕落した主人公と対比的な存在として女甲冑騎士を配置する発想がトリッキー過ぎて面白い。主人公のダメさ加減にも妙なリアリティがある。


『すぐ泣く先輩(2)(完)』

感情表現が豊かなギャルと彼女をからかう無表情な後輩女子の掛け合いを描いたコメディ。
ピュアで素直な感性を持っていて他人に感化されやすい主人公がキュート。周囲の人々がそんな彼女をからかいながらも慕っている関係性もハートフルで素敵だった。


『北北西に曇と往け(7)』

物の気持ちがわかる探偵の青年を主人公にアイスランドの過酷で雄大な自然を描く物語。
知らず知らずのうちに他人の心にぬるりと入り込む主人公弟の描き方が良い塩梅に気味が悪くて素敵。精緻な作画の美しいキャラクタ達や背景描写も安定感がある。


『パリッコの都酒伝説ファイル(1)』

売れない漫画家コンビと酒ライターが酒にまつわる不思議「都酒伝説」の謎に迫る物語。
 紹介される飲酒を楽しくするバカバカしいテクニックは妙に魅力的で実際に試してみたくなる。ツッコミが激しめのコメディスタイルも楽しい。


『フラジャイル(27)』

性格と口と人相が極めて悪い、病気の原因過程を診断する病理医が主人公の病院ドラマ。
宮崎先生の成長が誇らしいと同時に岸先生と少しずつ異なる道を歩み始める様子には哀愁も漂う。着実かつドラマティックなストーリー演出が素晴らしい。


『みちかとまり(2)』

8歳の少女と不思議な力を持ったもう一人の少女との交流を描いた作品。
理解が追い付かない描写が説明されないまま次々展開されていく構成が作品全体に漂う不気味な雰囲気を効果的に演出している。なんだか呑気なキャラクタ達の雰囲気も超常現象と対比的でよい。


『8月31日のロングサマー(3)』

ループする8月31日を抜け出すために関係を深めようとする男女を描いたラブコメディ。
主人公二人の恋愛における攻守が頻繁に入れ替わりお互いへの意識を強め合っていくストーリー構成が上手く働いている。ピュアな二人のたどたどしい恋模様が素敵。


『ニセモノの錬金術師(2)』

チートスキルで錬金術師を演じる転生者の男性と彼が買った奴隷の少女を描くファンタジー。
オリジナリティの高い設定や癖の強いキャラクタ達の配置など作品全体がしっかり作り込まれている印象。トリッキーなストーリー構成も面白い。


『冒険者絶対殺すダンジョン(1)』

冒険者を倒すためにダンジョンを魔改造するフロアスタッフ女子二人が主人公の物語。
RPGゲームの定番設定をメタったようなネタのチョイスやお話の作り方がトリッキーで楽しい。グロテスクな事象をさらっと入れ込んでくる構成も道満作品らしい。


『イズミと竜の図鑑(1)』

吟遊詩人の少女とダンジョン案内人の獣人男性の竜の図鑑を作るための旅を描く物語。
ロマンあふれる世界観に幻想的な画面演出、シビアなストーリー、魅力的なキャラクタ達などが合わさり総合力の高い骨太なファンタジーに仕上がっている。


『仏ガール(3)(完)』

仏像オタクの美術部顧問とその生徒が仏像鑑賞のために各地に赴く物語。
実在する仏像のビジュアル面での迫力を魅せる画面表現には拘りを感じる。仏像に関する逸話の紹介も含めて題材に対するリスペクトが随所に感じられて好感が持てる作品でした。


『おねぇちゃん日和(3)(完)』

ちょっとおバカな姉とツッコミ役の妹、二人の何気ない日常の掛け合いを描くコメディ。
とぼけた主人公のキャラクタやそれにツッコむ周囲の人々との掛け合いの軽快さ、関西弁のセリフのリズム感など、コメディとして読みやすい作品でした。


『路傍のフジイ(2)』

40過ぎで非正規社員、冴えないけど何故だか人を惹き付ける不思議な男性が主人公の物語。
他人が見せるふとした瞬間の何気ない言動に周囲の人々が触れ、それが考え方を少しだけ考え方を変えるきっかけになる、という地味ながら繊細なストーリーが独特で面白い。


『米蔵夫婦のレシピ帳(3)』

妻に先立たれた堅物な小説家の男性が妻の残したレシピ本を元に料理を作り記憶を辿る物語。
亡き人を偲ぶキャラクタ達の言動や表情の演出が非常にエモーショナルで心が揺さぶられる。徐々に主人公が故人の死に向き合っていくストーリー構成も秀逸。


『ヘブンの天秤(4)(完)』

素行の悪い天使が堕天しないために地上に降りて人助けをする物語。
迷い苦悩し続けた主人公の勇気を振り絞った反攻を完膚なきまでに踏みにじる救いのないラストはこれ以上なく残忍かつ悪趣味。作者の短編同様、長編でも後味の悪さは健在だった。


『鬼ゴロシ(13)』

謎の暴漢集団に家族を殺され自身も頭部を損傷した男の復讐劇を描く物語。
常人が想像できる範囲をはるかに超える暴力の連鎖を描いてきた本作にも最終決戦が迫る。それぞれの信念の下、キャラクタ達も覚悟が決まっておりとんでもない惨劇が繰り広げられそうな雰囲気。