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 2024年上半期まとめ記事、その1。読んだ漫画全部のまとめ。

 2024年上半期に読んだ漫画は355冊。月平均60冊弱と例年より少な目。生活環境の変化などあるので致し方なし。

 その中でオススメの作品をランキング形式で50作品紹介します。皆さんの漫画探しの参考にして頂けると幸いです。


50位『どくだみの花咲くころ(1)』
奇行が目立つ小学生男子と彼の作る「作品」に執着する優等生男子との交流を描く物語。 
問題児と優等生という構図のはずが、後者も実態は変な奴で問題児側が振り回される二人の関係性が独特。妙なテンションの掛け合いもユニークな雰囲気。


49位『パリッコの都酒伝説ファイル(1)』
売れない漫画家コンビと酒ライターが酒にまつわる不思議「都酒伝説」の謎に迫る物語。 
紹介される飲酒を楽しくするバカバカしいテクニックは妙に魅力的で実際に試してみたくなる。ツッコミが激しめのコメディスタイルも楽しい。


48位『三拍子の娘(3)(完)』
母親と死別し父親に捨てられたけど今を楽しく生きる三人姉妹の日常を描いた物語。 
三者三様の個性を持った主人公達は皆魅力的で軽やかに逞しく生きる姿や彼女らの関係性も素敵。シンプルな描線の絵柄もユニークで最後までさわやかな印象の作品でした。


47位『トリリオンゲーム(9)』
世界一ワガママな男とPCオタク、二人の青年が1兆ドル稼ぐことを目指す物語。
次々ステージがジャンプアップしてスケールが大きくなるストーリーに爽快感がある。宿敵との共闘や袂を分かつ主人公二人などの各キャラクタ描写も強度が高い。


46位『ここは今から倫理です。(9)』
問題を抱える生徒達と対話しながら倫理を説く高校教師を描いた物語。
多様な若者達の十人十色な悩みに対する描写にリアリティがあり、その悩みに対して倫理の知識と対話を通してほんの少しの解決を図る教師の描き方も素晴らしい。


45位『ヒストリエ(12)』
アレクサンドロスの書記官を主人公に据えた古代ヨーロッパ歴史物。
5年ぶりの新刊で過去のストーリーがうろ覚えであっても作品世界に没入させてくる力強い漫画表現と演出力は圧巻。ここで作品が終わったとしても後世に語り継いでいきたい名作。


44位『放課後ひみつクラブ(4)(5)』
エキセントリックな少女と冷静な少年が学園の秘密を探るコメディ。
構図や吹き出し、漫画表現などを駆使した画面で繰り広げられるコメディ描写はハイテンポで楽しい。パワフルなキャラクタが暴れまわった結果、ストーリーもフリーダムになってきた。


43位『ウサギのプリンセス』
ウサギの国を統べる女王と周囲の動物達との交流を描いたコメディ。
キュートな絵柄にメルヘンで可愛い世界観ながら時々毒も漏れ出てくる独特の雰囲気が楽しい。キャラクタ達の掛け合いも軽快でストレスなく読めるのでコメディとしてクオリティが高い。


42位『星野くん、したがって!』
傍若無人に人を振り回す女子と彼女にを目つけられた中学生男子との交流を描いた物語。
芸人のコントを漫画に落とし込むという挑戦的なコンセプトの作品であり、コントの間合いと漫画表現がミックスされたような雰囲気が独特で面白い。


41位『いっていっぱいいって』
性に対する認識が明後日の方向にずれた女子達の会話劇を描いた下ネタギャグオムニバス。
ずれた倫理観や貞操観念に関するネタのバリエーションが豊富で作者の発想力に毎度感心させられる。ヘンテコな女子に振り回される男子の姿が滑稽。


40位『ふたりで木々を』
木を抜くことを生業にしようとする娘など、奇妙な思考回路を備えた女子達を描くオムニバス。
独自のルールや価値観に従うキャラ達の言動は不条理ではあるが懸命な彼女らに妙な親しみも感じる。平方イコルスン作品でしか味わえないオンリーワンな雰囲気。


39位『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ(2)(3)』
契約社員で働く青年が人生を成功に導くために恋をしようと奮闘する物語。 
社会的弱者が言葉巧みに惑わされて陰謀論にハマり、そして少しの出来事でその信奉が脆く崩れ去っていく過程の描き方にリアリティがあって素晴らしい。


38位『ドラゴン養ってください(1)』
一人暮らしの大学生男子とプライドの高いドラゴンとの奇妙な同居生活を描いたコメディ。
鋭いツッコミが特徴的な掛け合いは軽快なリズムで楽しい。妙に見栄っ張りなドラゴンが人間達の文化を小ばかにしながらも溶け込んでいく様子も滑稽で面白い。


37位『君と宇宙を歩くために(2)』
ヤンキーの少年と転校生のもう一人の少年、「普通」ができない二人を描く物語。
楽しいけどしんどい人づきあいや怒られることへの恐怖など、主人公二人の思考描写が詳細で共感性が高い。二人が互いに影響し合って前に進んでいく展開も素晴らしい。


36位『ブスなんて言わないで(4)』
自身の容姿に自信のない女性と美容研究家の女性がルッキズムについて考える物語。
男性美容研究家や若い女性に偏ったキャラクタ絵の是非など、様々なルッキズムのテーマに賛否どちらの意見も交えながら描いてくれており題材に対して非常に誠実。


35位『フールナイト(8)』
死が迫る人々を植物に変える「転花」が普及した世界を舞台にした物語。
主人公が仲間達と幸せな時間を過ごし自分の人生に意味を見つけていくにつれて彼の死が近づいている事実が一層切なくなる。ドライな雰囲気の作品ながら感情を揺さぶる力が強い。


34位『ドッグスレッド(1)(2)』
夢が潰えたフィギュアスケータの少年がアイスホッケーに舞台を移して戦う物語。
エッジの利いたパワフルなキャラクタ達が魅力的で彼らがぶつかり合いながらもお互いを認め合っていくストーリーも熱い。競技シーンを盛り上げる画面やページ演出も巧み。


33位『8月31日のロングサマー(3)(4)』
ループする8月31日を抜け出すために関係を深めようとする男女を描いたラブコメディ。
二人の気持ちが徐々に近づいてきて通じ合うと思われた矢先に一気に突き落とすようなストーリーの落差が強烈。主人公両方の心理が丁寧に描き分けられている。


32位『アフターゴッド(6)(7)』
「神」により日本列島の半分が占拠された日本を舞台に神に復讐を誓う少女を描く物語。
神同士の内紛や対抗する物の存在をほのめかすことにより作品初期では絶対的な存在だった神々に弱ささえも感じさせるようなストーリーの組み立て方が素晴らしい。


31位『H村へようこそ!(1)』
触れてはいけない因習の気配が漂う田舎に引っ越してきた都会の少女が主人公の物語。
キュートなキャラクタ達の平和な日常生活と不気味で排他的な村の因習描写が混在しておりバランスが絶妙。村の全様が少しずつ明らかになっていくストーリー構成も巧み。


30位『あくまでクジャクの話です。(1)』
恋愛に悩む男性教師と生物学を通して恋愛の悩みに答える変な女子高生との交流を描く物語。
冷酷でエキセントリックなようで初心な一面も持つヒロインが造形も含めて大変魅力的。生物学にこじつけて恋愛の悩みを解決していく構成も面白い。


29位『ザ・キンクス(1)』
小説家の父親と専業主婦の母親、娘と息子の4人家族の日常を描いた作品。
人間味溢れるキャラクタ達の交流が温かな雰囲気で心地よい。奇想天外な榎本俊二世界の片鱗はあるものの下ネタはなく、ダイナミックな漫画表現のみに活かされているのも興味深い。


28位『氷の城壁(8)~(11)』
人と距離を取りがちな女子高生含む男女グループ4人組の交流を描く物語。
友人と恋人の違いなど思春期らしい人間関係の悩みが解像度高く描かれており素晴らしい。大きく動き出したメインキャラ達の関係がどの方向に向かうか予想がつかず緊迫感がある。


27位『正反対な君と僕(6)』
素直になれない陽キャ女子と彼女が想いをよせる物静かな男子との交流を描いた作品。
初々しい高校生達の恋愛模様が自意識との葛藤や迷いも含めて解像度高く描かれている。各キャラクタの価値観や他者との接し方の違いもきっちり描き分けられている。


26位『すずめくんの声(2)(完)』
元恋人のことが忘れられない女性のもとに彼そっくりの声を持つ男性が現れる物語。
めんどくさい思考回路を持ったキャラクタ達が皆人間味に溢れており、各人が自身に折り合いをつけていく描き方も素敵だった。コミカルな心理描写もキュートだった。


25位『ニセモノの錬金術師(1)(2)』
チートスキルで錬金術師を演じる転生者の男性と彼が買った奴隷の少女を描くファンタジー。
オリジナリティの高い設定や癖の強いキャラクタ達の配置など作品全体がしっかり作り込まれている印象。トリッキーなストーリー構成も面白い。


24位『SAN値直葬!闇バイト(2)』
守銭奴少女とそのバイト仲間達が怪物のぬいぐるみを仕入れる怪しい仕事に勤しむコメディ。
並外れたがめつさでクトゥルフ神話の大いなる存在達さえも退ける主人公がとにかく強烈なキャラクタ。生死さえもコメディ展開に持っていく腕力すさまじい。


23位『フラジャイル(27)』
性格と口と人相が極めて悪い、病気の原因過程を診断する病理医が主人公の病院ドラマ。
宮崎先生の成長が誇らしいと同時に岸先生と少しずつ異なる道を歩み始める様子には哀愁も漂う。着実かつドラマティックなストーリー演出が素晴らしい。


22位『米蔵夫婦のレシピ帳(3)』
妻に先立たれた堅物な小説家の男性が妻の残したレシピ本を元に料理を作り記憶を辿る物語。
亡き人を偲ぶキャラクタ達の言動や表情の演出が非常にエモーショナルで心が揺さぶられる。徐々に主人公が故人の死に向き合っていくストーリー構成も秀逸。


21位『これ描いて死ね(5)』
漫画を読むのが大好きな少女とその仲間達を描く漫研部が舞台の物語。
デッサンの重要性やキャラクタ作りのコツなど漫画技法の要素も交えつつ高校生達の青春が真正面から描かれている。巻末の漫画家話も本編と違った世界の漫画創作話で興味深い。


20位『超巡! 超条先輩(1)』
超能力で捜査を行う嫌われ者の警官と彼の相棒となった新米警官が主人公のコメディ。
ひねくれたキャラクタ達や言語センス溢れる鋭いツッコミ、キュートなキャラ造形、まとまりのよいお話の構成など、コメディとして高クオリティで安定しており素晴らしい。


19位『ダイヤモンドの功罪(5)(6)』
規格外の才能ゆえに野球を楽しむことが許されない少年が主人公の物語。
保守的で主人公を守ってくれない大人達や彼の立場に理解を示すがそれゆえに追い詰めていくチームメイト達、多方面から攻められるシチュエーションの作り方が見事ゆえに残酷。


18位『税金で買った本(10)(11)』
ひょんなことから図書館で働くことになったヤンキー少年が主人公の物語。
やっかいな同僚のやる気を引き出す方法や更生への期待、公共サービスに対する横柄な利用者、など図書館業務が現実感を持って描かれておりお仕事物として優秀。


17位『付き合ってあげてもいいかな(12)』
勢いで付き合い始めた大学生二人のすんなりいかない関係を描く百合恋愛物。
想い合いながらもすれ違いが大きくなり別れていくカップル達の描き方が痛いほどにリアル。キャラクタ心理の作り込みや描写力が非常に高い作品。


16位『姫様"拷問"の時間です(13)~(15)』
高級食パンやワッフルなど様々な拷問を受ける囚われの姫を描いたコメディ。
本作独自の拷問概念が更に広がって好き放題に展開されており楽しい。出オチみたいな設定なのにここまでバリエーション豊かにお話を作れているの素晴らしい。


15位『Thisコミュニケーション(12)(完)』
残酷非道な軍人の男と特殊な特性を持つ6人の少女達が人類の敵である怪物と戦う物語。
主人公を最後まで一貫してシリアルキラーとして描きつつ少女達との絆を形成し大風呂敷も畳んだ見事な最終巻。しっかり練り込まれた素晴らしい作品でした。


14位『それでも天使のままで』
エロ漫画を描く少年と彼の漫画に興味を持った少女との交流を描いた表題作含む作品集。
狭い視野や恵まれない境遇が原因で美しかったはずの恋愛感情が歪んでいき、眼をそむけたくなるほど悲惨な結末に行きつくストーリー構成は強烈。


13位『恋は忍耐(1)』
新たに共学になった元男子高に入学した少女のとある目的のための活動を描く物語。
主人公が魔性の魅力で男子生徒達を次々惹きつけては彼らの拙い恋愛理論を咎め袖にしていくお話の構成が非常にユニーク。詰問シーンのヘンテコ演出もぶっ飛んでいて面白い。


12位『みやこまちクロニクル 父ありき編』
岩手在住のアラフィフの独身男性と同居する両親との日々を描くエッセイ漫画。
日常の出来事が何気ない会話まで淡々としたためられており作者とともに父親の介護を追体験しているような感覚になる。エッセイとして非常によくできている。


11位『シメジ シミュレーション(5)(完)』
2年間の引きこもり生活で頭からしめじが生えてきた少女を主人公にした作品。 
ゆる日常4コマから全人類を巻き込んだ壮大なSFへと変貌していった構成には驚かされた。自己と他者の境界など哲学的な思考を果敢に描こうとした意欲的な作品でした。


10位『ずっと青春ぽいですよ(2)』
アイドル研究部のオタク男子達が陰キャながらも青春を謳歌するために奮闘する物語。
時に空回り大失敗しつつも若さと情熱で突き進んでいくキャラクタ達がキラキラ眩しくって素敵。その情熱が周囲に伝播していくストーリーも気持ちいい。


9位『メダリスト(10)』
気弱な少女と熱血男性コーチのコンビがメダリストを目指すフィギュアスケート物語。
障害が適切に配置してあるストーリー展開やキャラクタ同士の新たな関係性、主人公二人で進むための協力体制の再構築など、どの要素も非常に上手く制御されている。


8位『スキップとローファー(10)』
自信家だけどちょっと抜けてる少女とクラスメイト達との交流を描く物語。
多感な時期の若者達の繊細な心理的揺らぎや他者との交流を通した変化が苦い描写も交えつつ軽やかに描かれている。キャラクタ達の成長や絆を深め合う様子が微笑ましい。


7位『放課後ブルーモーメント(3)(完)』
真面目だけど要領の悪い女子と補習授業で一緒になった男子との交流を描いた作品。
助け合う主人公カップル含めたメイン5人の関係性や少女漫画的シチュエーション演出力など素晴らしかった。全3巻のストーリー構成も美しくまとまっていた。


6位『スナックバス江(14)(15)』
老婆とチーママが切り盛りする場末のスナックを舞台にしたギャグ漫画。
本流の隙間を攻めるような独特の話題選びにゲスながら憎めないキャラクタ達、センス溢れるハイテンポな掛け合いなど、コメディとしてどの要素も一級品で素晴らしい。


5位『放課後帰宅びより(1)(2)』
帰り道にロマンを求めるハイパー帰宅部の主催者女子とその部員である男子を描くラブコメディ。 
ラブ描写とコメディの緩急や惹かれ合っていく二人の関係性変化の描き方、破壊力の高いシチュエーション演出などラブコメとしてクオリティが高い。


4位『イズミと竜の図鑑(1)』
吟遊詩人の少女とダンジョン案内人の獣人男性の竜の図鑑を作るための旅を描く物語。
ロマンあふれる世界観に幻想的な画面演出、シビアなストーリー、魅力的なキャラクタ達などが合わさり総合力の高い骨太なファンタジーに仕上がっている。


3位『ふつうの軽音部(1)(2)』
邦楽ロック好きの少女が高校入学を期にギターを買って軽音部に入部する物語。
音楽への興味だけでなく友情や恋愛などそれぞれの理由で軽音部に所属するキャラクタ達の心理が等身大でリアリティがある。舞台は狭いが動きのあるストーリー構成も素晴らしい。


2位『劇光仮面(5)』
大学時代に特撮研究会に所属していた男性とその仲間達を描く物語。
己の信念を貫こうとするキャラクタ達の熱量や悲劇も含め濃厚な人間ドラマ、息をつく暇もないストーリー展開、緊迫感溢れる画面演出は圧巻。唯一無二の山口貴由ワールドは面白さ天井知らず。


1位『夏目アラタの結婚(12)(完)』
児童相談所勤めの男性が死刑囚女性に獄中結婚を持ち掛けるラブサスペンス。
緻密に作り込まれた物語の全てに意味を持たせる怒涛の伏線回収が気持ちいい。二人の歪みながらも美しい関係性とそれを演出する終盤シーンの演出も圧巻。傑作でした。