
2025年2月読んだ漫画の中でオススメ作品のまとめです。
『ワールドトリガー(28)』(葦原大介)
異次元からの侵略者である近界民と戦うボーダー達を描いた戦略バトル物。
膨大な数のキャラクタをオリジナリティの高い設定と物語の中で制御しながら、ロジカルな対話を通して彼らを成長させていく構成力の高さは毎度のことながら毎巻毎巻感心させられる。
『氷の城壁(14)(完)』(阿賀沢紅茶)
人と距離を取りがちな女子高生含む男女グループ4人組の交流を描く物語。
主人公達のトラウマとなった過去の人間関係にもきっちり向き合いつつ消化して遺恨を残さずハッピーな大団円。高校生の繊細な心理や人間関係を丁寧に描いた良い作品でした。
『逃げ上手の若君(19)』(松井優征)
生きる英雄と殺す英雄、北条時行と足利尊氏の生死を賭けた鬼ごっこを描く物語。
長期連載になってもダレないように山場となる展開をきっちり配置するストーリー構成力が素晴らしいし、それをちゃんと盛り上げる演出もよく計算されている印象。
『放課後ひみつクラブ(8)(完)』(福島鉄平)
エキセントリックな少女と冷静な少年が学園の秘密を探るコメディ。
スケールの大きなぶっ飛んだ超展開もいつものドタバタコメディで消化して綺麗に完結。最後までクオリティが安定した、ストレスなく読める良いコメディでした。
『サチ録~サチの黙示録~(4)』(茶んた)
日々の行いに対する採点結果に人類滅亡の命運が託されたクソガキが主人公のコメディ。
緊迫感のあるシチュエーションのはずがキャラクタ同士がどんどん仲良くなっていき、天使も悪魔も大人も子供も温かく交流していく雰囲気が優しくて素敵。
『推しをカタチにする仕事(2)』(安藤狂太郎)
アニメや漫画のコラボ商品やキャラクタグッズを企画、制作する会社を舞台にしたコメディ。
ボケツッコミの軽快な掛け合いの密度が濃くて楽しい。エキセントリックなアイディアが飛び交いながらも何だかんだで良い商品が出来ていくストーリーも良い。
『税金で買った本(14)』(ずいの/系山冏)
ひょんなことから図書館で働くことになったヤンキー少年が主人公の物語。
クソ業務システムや管理者と現場の意識の乖離など、図書館に限らない普遍的な組織における問題がリアリティたっぷりに描かれている。キャラクタの成長や変化が感じ取れるのも良い。
『こっち向いてよ向井くん(8)(完)』(ねむようこ)
25歳で恋人にフラれてから10年間恋愛していない会社員男性の新しい恋への奮起を描く物語。
主人公が様々な経験を経て恋愛や結婚について学びつつ、彼らしい芯の柔らかさが残っている描き方が良かった。オチも本作らしくて素敵。
『せせせせ! ~目指せ初H! 童貞女子のときめき大作戦~(2)』(たばよう)
目覚めると中学2年生女子になっていた25歳童貞男性がセックスをするために奔走する物語。
すぐに破滅に向かいそうな設定なのに、失敗を繰り返し周囲に諭されることで主人公がまともな思考を学んでいるのが面白い。
『にこけい! 怒りのマンガ刑事(2)』(マクレーン)
特別任務で漫画家を目指すことになった二人の敏腕刑事を描く物語。
ストーリーの脈略も無視して作者の好きなキャラクタや展開を詰め込んでいる自由奔放さが大変ユニーク。基本的に荒唐無稽ながら時よりエモいストーリー構成も独特。
『ウィキッドスポット(1)』(Sal Jiang)
隠遁生活から一変、SNSで自身の姿を発信する魔女を主人公に現代を生きる魔女達を描く物語。
外の世界の新しい刺激に子供のように目を輝かせる主人公の表情が無邪気さと狂気が合わさっていて素敵。もう一人の女性との対比的な関係性も面白い。
『はだかで恋を語る仲(1)』(鳩野マメ)
理想のセックスに至るために片想い相手と風呂場で性行為について語り合う男子を描く物語。
片想い相手のセックスに関するエピソードを聞かねばならないシチュエーションが斬新で、男子側からすれば地獄だがもだえ苦しむ様子が滑稽で面白い。
『ユニ様の舟(1)』(野咲ソウ)
宗教二世の家に生まれた一軍女子から神様だと勘違いされている陰キャ男子が主人公の物語。
一時的に優位な関係を築くために信仰を利用してしまい、その危うさに気づいていない主人公の危うさにヒヤヒヤさせられる。二人の関係性の行方が気になるところ。
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(26)』(谷川ニコ)
陰気で口の悪い女子高生とその周りのクラスメイト達を描いた青春コメディ。
癖が強いキャラクタが増えてそれぞれが好き放題暴れまわる中で、各人に見せ場を作ったり成長させていくストーリー構成力が素晴らしい。
『トリリオンゲーム(10)』(稲垣理一郎/池上遼一)
世界一ワガママな男とPCオタク、二人の青年が1兆ドル稼ぐことを目指す物語。
ビジネスにおける知略がぶつかり合うストーリー構成はダイナミックで爽快感がある。トレンドトピックを組み込むことでリアリティを演出するバランス感覚も素晴らしい。
『ベイビー車中ハッカーズ(1)』(たびれこ)
ちょっと暗めの女子ともう一人の陽キャ女子、女子高生二人の車中泊ライフを描く物語。
主人公二人の活き活きした表情や楽しげなやり取りが印象的。車中泊ならではのワクワク感を画面的な工夫も合わせて描こうとする姿勢も好感が持てる。
『バグエゴ(1)(2)』(ONE/設楽清人)
ウラワザと呼ばれる現実世界のバグを活用しようとする男子高校生二人組を描く物語。
ONE先生のぶっ飛んだアイディアとトリッキーなストーリー構成を設楽先生が上手く作品に落とし込んでいる印象。憎まれ口を叩き合いながら強い絆を感じる主人公二人の関係性も良い。
『松かげに憩う(5)』(雨瀬シオリ)
幕末の日本を舞台に、吉田松陰と彼の元に集う歴史の偉人達を描く物語。
幕末における諸外国の脅威やそれに危機感を覚える若者達がすさまじい熱量で描かれており素晴らしい。死後も様々な人に影響を与え続けた吉田松陰の描き方も上手く工夫されている。
『ノス&ザクロ モンスターズタイム()』(ラリアット)
物静かな母親と天真爛漫な娘、二人の吸血鬼親子と周囲の人外達の交流を描く物語。
カートゥン調のキュートなキャラデザインが非常に魅力的で個性豊かなモンスター達の交流も可愛らしくって癒される。主人公親子の特別な関係性も素敵。
『花四段といっしょ(5)』(増村十七)
対局の途中でも余計なことを考えがちなプロ棋士が主人公の物語。
バリエーション豊か過ぎる棋士達の生態に関する描写が面白おかしい一方で競争激しい勝負の世界も真摯に描かれており緊迫感がある。将棋にリソース全振りでどこか抜けている棋士達が可愛らしい。
『音盤紀行(3)』(毛塚了一郎)
祖父の遺品のレコードの謎を追う女性二人の話などレコードをテーマにした短編集。
レコードというアナログな媒体を中心に据えているが故に生まれる人情味溢れる温かい交流やロマンのあるストーリーが素敵。精緻な背景描写による作品世界の演出も魅力的。
『平和の国の島崎へ(8)』(濱田轟天/瀬下猛)
国際テロ組織の工作員だった男性が一般人になり平和な日本で暮らす物語。
戦場でしか生きてこなかった主人公の対人関係における欠落した感覚の描写がロジカルでリアリティがある。鼻につく人物の描き方も巧みで多様な人間の性質が描かれている。
『8月31日のロングサマー(7)』(伊藤一角)
ループする8月31日を抜け出すために関係を深めようとする男女を描いたラブコメディ。
二人の関係を揺さぶったり進展させたりするためにループ物の仕掛けが上手く活かされている。同一構図のコマ割りやページめくりのユニークな漫画表現も面白い。
『よつばと!(16)』(あずまきよひこ)
好奇心旺盛で元気いっぱいな少女とその周りの人々を描いた日常物。
天真爛漫な主人公と周囲の人々との楽しくて優しい交流は連載開始後22年経っても変わらぬ魅力がある。サプライズゲストの登場も作者ファンとして嬉しい。今後も末永く続いてほしい作品。
『ぷにるはかわいいスライム(7)』(まえだくん)
命が宿ったスライム少女と彼女を作った少年との交流を描いたコメディ。
コメディの雰囲気はライトながら、人間とAI、意思を持つ生物の間の哲学的な関係性まで踏み込んだストーリーが展開されており子供向け作品ながら油断ならない。
『寿司ガキ』(ichika)
生意気だけど恋する小学生女子と彼女に寿司をおごる大学生男子の交流を描いた物語。
女子が男子側を侮っているようで深くリスペクトしていたり、小学生なようで語彙が渋かったり、テンプレート的な設定の皮を被った妙な関係性の二人の掛け合いがヘンテコで楽しい。
『バルバロ!(1)』(岩浪れんじ)
なにわのファッションヘルスを舞台に風俗嬢の多種多様な人間模様を描く物語。
風俗嬢や客達の何気ない会話や生活模様には生きている人間の様な生々しさがある。ヘビーなシチュエーションも多いがコメディ強めで面白おかしく読めるのが岩浪作品ならでは。
『路傍のフジイ(4)』(鍋倉夫)
40過ぎで非正規社員、冴えないけど何故だか人を惹き付ける不思議な男性が主人公の物語。
日常の何気ない一幕で充足感を覚える瞬間を描く静かなストーリー構成や演出が非常に巧み。ゆるく繋がった人間関係の描き方も素敵でスローな雰囲気に安心感がある。
『フールナイト(10)』(安田佳澄)
死が迫る人々を植物に変える「転花」が普及した世界を舞台にした物語。
精緻かつスタイリッシュな作画で表現される暗くて陰鬱な世界の雰囲気は相変わらず素敵。更に作品世界が広がっている展開であり物語が今後どんな方向に向かっていくか楽しみ。
『父を怒らせたい(2)』(おかくーこ)
末期ガンでおとなしくなった粗暴な父を前に気持ちの置き場に悩む女性を描く物語。
生まれ育った家庭環境が親になった後の子育てにも影響を与えていく非情な連鎖の描写にはリアリティがある。連鎖から抜け出そうとするキャラクタ達の姿は力強い。
『鬼ゴロシ(16)(完)』(河部真道)
謎の暴漢集団に家族を殺され自身も頭部を損傷した男の復讐劇を描く物語。
最終局面もダイナミックな暴力がこの上ない残忍さで繰り広げられ、キャラクタやストーリーの結末も本作らしい畳み方。とんでもない密度のまま走り切った怪作だった。
『本田鹿の子の本棚 怪奇!本読み男篇()』(佐藤将)
クレイジーな読書趣味の娘の本棚を盗み見る父親とぶっ飛んだ設定の作中作を描くコメディ。
作中作の斜め上の発想力には毎回驚かされるし、そのアイディアを形にする構成力も素晴らしい。本巻収録の話だと『武人警察』が好き。
『パリッコの都酒伝説ファイル(2)』(パリッコ/ルノアール兄弟)
売れない漫画家コンビと酒ライターが酒にまつわる不思議「都酒伝説」の謎に迫る物語。
酒ネタと都市伝説のこじつけはバカバカしくて楽しいし、ハイテンションなツッコミも鋭い。登場する酒テクニックもお手軽そうで実際に試してみたくなる。
『ただの飯フレです(4)』(さのさくら)
マッチングアプリで出会ったご飯を食べるためだけに集まる男女を描く物語。
人間関係や仕事におけるわだかまりを漫画のストーリーに落とし込む手腕が秀逸でリアリティがある。周囲から見た主人公達の関係性の特殊さも丁寧に描かれており素晴らしい。
『隙間(1)(2)』(高妍)
沖縄に留学している台湾人の視点から台湾の政情やアイデンティティについて描く物語。
主人公が異国の地の暮らしの中で自国の歴史や状況を学んでいくストーリーには作者の強いメッセージが込められており興味深い。青春描写と思想的な要素の絡め方も面白い。
HeJearne