
2025年3月読んだ漫画の中でオススメ作品のまとめです。
『正反対な君と僕(8)(完)』(阿賀沢紅茶)
素直になれない陽キャ女子と彼女が想いをよせる物静かな男子との交流を描いた作品。
メイン男女3組の関係性にそれぞれ上手く決着をつけて大団円。卒業後の彼らの姿も描いて物語の後への想像の余地を残す作品の畳み方も素晴らしい。
『BEAT&MOTION(6)(完)』(藤田直樹)
かつてアニメ制作の夢を諦めていた青年がある女性との出会いから再び夢と向き合う物語。
主人公が挫折から周囲の人々に支えられながら立ちあがっていく構成が力強かった。二人が夢を語り合った場面がリフレインするラストシーン美しい。
『ゴーストフィクサーズ(4)』(田中靖規)
GHOSTと呼ばれる非現実的現象を調査・管理する校正官達の戦いを描く物語。
オリジナリティの高い独特の世界観や独創的な超能力やネーミングセンスなど、少年バトル漫画として高水準。予想外の真実が次々明らかになっていくストーリー構成も巧み。
『都市伝説先輩(1)』(平岡一輝)
大学オカルト研を舞台に都市伝説を惹きつける男子とオカルトに会いたい女子を描くコメディ。
正真正銘の怪異の前でキャラクタ達が慌てふためきながらもアホみたいな行動で何とか解決していくコメディスタイルが楽しい。背筋が凍るホラーオチのつけ方も面白い。
『アスラの沙汰(1)』(宇乃花空樹)
悪いことした人には天罰が下る、と妄信するいじめられっ子の少年が主人公の物語。
主人公の認知が歪んだまま悪人を裁く断罪者として活動していくコンセプトが危うくて魅力的。彼が今後、どのようにして自分の罪を認識してそれと向き合っていくか楽しみ。
『ドラマクイン(1)』(市川苦楽)
宇宙人がのさばるようになった日本で彼らに不満を持つ二人がある活動を始める物語。
底辺に生きる主人公二人が自分の欲望をむき出しにして衝動的に動く姿は綱渡りのようでスリリング。見開きを使ったインパクトのある画面や独特の宇宙人の造形も面白い。
『続テルマエ・ロマエ(2)』(ヤマザキマリ)
温泉を通じて古代ローマから現代日本にタイムスリップする浴場技師が主人公の物語。
ストーリー構成は毎回お決まりの展開ながら、そのテンプレートが強いためマンネリを感じずに楽しめる。話間に挟まる作者による温泉コラムも読みごたえがある。
『平成敗残兵すみれちゃん(5)』(里見U)
元アイドルの31歳女性が従弟の男子高校生にプロデュースされて同人グラビアを出す物語。
ダメ人間ながら何故だか憎めないキャラクタの描き方が巧み。主人公と同人女、二人が別ベクトルでダメながら愛すべき要素も強い強烈なキャラクタ。
『ややこしい蜜柑たち(3)』(雁須磨子)
親友の彼氏に不義理な行いをしてしまった女性が主人公の物語。
キャラクタ心理の機微を情緒的に描く漫画表現が巧みで会話劇の中に臨場感がある。真意の読めない不気味な女性に振り回される男性キャラが不憫ながら慌てふためく様子は滑稽。
『今日も吹部は!(2)』(宮脇ビリー)
野球部から吹奏楽部に転部した少年と全然まとまりのない部員達との交流を描くコメディ。
癖が強すぎるキャラクタ達が好き放題暴れまわるドタバタな雰囲気が楽しい。切れ味鋭い掛け合いにもセンスが光る。ラブ要素の行方も気になるところ。
『インハンド(6)』(朱戸アオ)
偏屈寄生虫学者が医学関係の事件に巻き込まれるサスペンス。
現実の最新医学トピックをベースにフィクションながら現実に起こりえそうな事件を展開していくストーリー構成力が秀逸。癖の強いキャラクタ達の描きわけや魅力の引き出し方も素晴らしい。
『マネマネにちにち(1)』(山本崇一朗)
三者三様の個性を持った高校野球部マネージャー三人組の日常を描いたコメディ。
造形と性格ともに愛らしいキャラ達やボケとツッコミが軽快な会話劇、ほんのりなラブ展開など、山本崇一朗コメディらしい要素がたっぷりでコメディとしてクオリティ高い。
『ネムルバカ新装版』(石黒正数)
夢に向かって努力する先輩とそんな彼女に憧れつつ漫然と日々を過ごす女子大生を描く物語。
すずろに生きる大学生の生態や夢を追う人間との対比などの描写は旧版単行本の発売から17年経った今読んでも色あせない魅力があって素晴らしい。
『司書正(3)』(丸山薫)
膨大な書の情報を暗記した抜け殻のような男を中心に繰り広げられる古代中国宮廷劇。
血を血で洗う宮廷政治の争いと司書正をベースにしたユニークな設定が上手くかみ合っている印象。少数民族の迫害や歴史改ざんなどの要素も入ってきてストーリーに厚みがある。
『涙子さまの言う通り(3)(完)』(山本ルンルン)
カルト的な魅力を持ち人々を惑わす少女が主人公のホラーサスペンス。
真意がわからないサイコパス少女の破滅衝動が帰着した末の最終話の展開はグロテスクな画面演出も含めて強烈なインパクトがあった。余韻を残すエピローグの構成もお見事。
『葬送のフリーレン(14)』(山田 鐘人/アベ ツカサ)
魔王を倒した勇者パーティの一人であるエルフが魔王なき世界のその後を辿るファンタジー。
新章突入でこれまでと異なる勢力が登場したことで、本作のユニークな世界観がどのように広がっていくか楽しみ。淡々とした戦闘描写の雰囲気も引き続き素敵。
『ガラガラポン(1)』(高橋葉介/みもり)
都市伝説や妄想が現実になる世界で虚構を消す仕事を請け負う修正局のコンビを描く物語。
物語をかき乱す役と収束させる役、作中での主人公二人の役割分担が上手くされており良いコンビ。ストレス構成の中での大仕掛けの仕込み方も上手くできている。
『国を蹴った男 上下』(伊東潤/幾花にいろ)
桶狭間の戦い前の今川家を舞台に蹴鞠職人と今川氏真に焦点を当てた歴史小説のコミカライズ。
戦国大名達のダイナミックな勢力争いが否応なしに進む中で、主人公二人の時代にそぐわない生き様が対比的に描かれており素晴らしいストーリー構成だった。
『あゎ菜ちゃんは今日もしあわせ(2)』(たばよう)
何にも取り柄がないコンビニバイトの女性が理性を飛ばして一人を楽しむ姿を描く物語。
共感性羞恥心をくすぐる主人公のダメっぷりが強烈ながら、そんな彼女が独特の思考回路を活かして何だかんだ穏やかに過ごす姿に奇妙な安心感がある。
『レッドブルー(13)』(波切敦)
ある理由から総合格闘技を始めた元いじめられっ子の少年を主人公とした物語。
各キャラクタの努力や練習が試合の中で発揮される描写が丁寧で説得力がある。地に足着いた格闘技描写と漫画作品としてのエンタメ性が高いレベルで両立している印象。
『みずぽろ(4)』(一色美穂/水口尚樹)
高身長でガタイもいいが泳げない男子と彼の陰に隠れがちなもう一人の男子を描く水球部コメディ。
自由人気質のキャラクタが多いのでコメディシーンの掛け合いも何だか気が抜けた雰囲気で楽しい。一般的になじみのない水球の競技描写も丁寧でわかりやすい。
『ハネチンとブッキーのお子さま診療録(3)』(佐原ミズ)
子育てに悪戦苦闘するシングルファーザーの男性と一風変わった小児科医が主人公の医療物。
小児科関係の事象について医学的対応を丁寧に説明しつつ、予測のつかない子供の行動との向き合い方や親の心持などもしっかり描いている。
『街道あるくんです(4)(完)』(竹本真/猪乙くろ)
江戸時代の幽霊女性を成仏させるために東海道を歩いて旅する会社員二人を描く作品。
奇人変人揃いの仲間が道中で増えていき、様々なトラブルはありつつ旅を楽しむキャラクタ達が描かれていて素敵だった。早期完結は残念だけど良い漫画でした。
『紛争でしたら八田まで(17)』(田素弘)
世界中の紛争地に赴き問題を解決する地政学コンサルタントの女性を描いた作品。
アメリカ大統領選など最新の時事トピックをタイムリーに取り上げてくれておりビジネス題材の作品として誠実。北欧の移民問題など日本人になじみのない社会問題も興味深い。
『焼いてるふたり(19)』(ハナツカシオリ)
BBQ好きの男性としっかり者のようで抜けている女性との夫婦生活を描いた作品。
日々の食卓や友人とのホームパーティを楽しくする様々な創意工夫が描かれており生活模様が豊か。ちょっとしたことに楽しみを見出すキャラクタ達のメンタルが素敵。
『冒険者絶対殺すダンジョン(2)』(道満晴明)
冒険者を倒すためにダンジョンを魔改造するフロアスタッフ女子二人が主人公の物語。
ダンジョン探索型のゲームや異世界転生のお決まりパターンをメタった設定は道満晴明作品のスタイルとマッチしている。散見されるパロディ的な小ネタも楽しい。
『放課後帰宅びより(4)』(松田舞)
帰り道にロマンを求めるハイパー帰宅部の主催者女子とその部員である男子を描く物語。
お互いに恋心を意識し始めた主人公二人のやり取りが非常に可愛らしい。両片想いより一歩進んだくらいの関係性とそれを活かすシチュエーションが合わさって強烈。
『半分姉弟(1)』(藤見よいこ)
フランス人の父と日本人の母を持つ姉弟などミックスの人々の苦悩を描いたオムニバス。
友人や職場の同僚との取り留めのない会話などの中に偏見や無意識の差別が混じる表現に現実感があり素晴らしい。各キャラクタの性格描き分けや心理の掘り下げも見事。
『ありす、宇宙までも(3)』(売野機子)
言語が苦手な少女が苛烈な天才少年のサポートを受けて宇宙飛行士を目指す物語。
主人公二人がお互いに支え合いながら夢に邁進していくストーリー構成が秀逸。二人が周囲の人々に認められていく工程も含めて爽快感があって気持ちいい。
『次の整理(1)』(光用千春)
小説家志望の清掃員が元クラスメイトの売れっ子作家と共同で過去の記憶を整理する物語。
作家との交流の中で主人公が自分のこれまでの生き方や価値観を見つめ直していくストーリー構成が巧み。心象風景をコミカルに表現する画面演出も面白い。
『なおりはしないが、ましになる(4)』(カレー沢薫)
発達障害の検査やその特性と折り合いをつけながらの社会生活を描く体当たりレポ漫画。
カレー沢薫先生ならではの独特の視点から社会生活や対人関係について面白おかしく語られおり興味深い。家族に関する衝撃の事実もネタにしちゃうスタンス強い。
『どく・どく・もり・もり(4)』(背川昇)
真っ赤な食用キノコの少女が両親の仇である毒キノコへの復讐を試みる物語。
オリジナリティの高い作品世界の全貌が徐々に明らかになってきており大仕掛けの気配に期待が高まる。キュートなキャラクタに課されたヘビーな境遇というギャップも強烈。
『大人も知らない みのまわりの謎大全』(ネルノダイスキ)
ブロック塀の形状の意図など、街中に見かける物の機能的な側面を解説した作品。
身近ながらよく知らない物に対する詳細な解説がされており知的好奇心が満たされる。ネルノダイスキ先生らしいダイナミックな画面表現も大変ユニーク。