
2025年4月読んだ漫画の中でオススメ作品のまとめです。
『ふつうの軽音部(6)』(出内テツオ/クワハリ)
渋めの邦楽ロック好きの少女を中心に高校軽音部の交流を描く物語。
個性豊かなキャラクタ達は皆魅力的。彼らが作り上げる絡み合って一筋縄ではいかない人間模様もよく練り込まれている。主人公バンドメンバーの交流もほっこり温かくて素敵。
『チェンソーマン(20)』(藤本タツキ)
チェンソーの悪魔と同化した欲望に素直な男とある悪魔に憑りつかれた少女を描く物語。
人間からは理解しがたい悪魔達の思考やそんな彼らの想定を超える主人公の言動、予測不能なトリッキーな展開など、本作にしか出せないオリジナリティがある。
『クニゲイ~大國大学藝術学部映画学科~(3)』(高野陽介)
映画監督に憧れる青年と天才肌で破天荒なもう一人の青年を描く芸大映画学科が舞台の物語。
エネルギッシュで青々しい創作論やメイン二人の強いキャラクタと関係性が力強い。今巻ラストの展開からどのように作品をまとめるか楽しみ。
『あくまでクジャクの話です。(4)』(小出もと貴)
恋愛に悩む男性教師と生物学を通して恋愛の悩みに答える変な女子高生との交流を描く物語。
想いを伝えて今まで以上に積極的にアプローチし続けるヒロインの暴走と空回りっぷりが楽しい。生物学と恋愛話の強引なこじつけも面白い。
『甘くて辛くて酸っぱい(1)』(はしゃ)
セカンドハウスを共同で借りるアラサー女性3人組が食事を楽しみ様子を描いた作品。
気質が異なる主人公3人の気の置けない掛け合いの雰囲気が素敵。登場する料理は手軽かつどれも美味しそう。話間の料理関係のコラム的ページも興味深い内容。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ(3)』(谷口菜津子)
婚約者にフラれたステレオタイプな男女観を持った男性が自分の価値観を見つめ直す物語。
古い考えに囚われるサブキャラクタと主人公を対比的に描いて彼の成長を強調するストーリー構成が巧み。女性サイドの描写も的確に挟んできている印象。
『最果てのソルテ(4)』(水上悟志)
奴隷商人に売られた少女の壮大な冒険の旅を描くハイファンタジー。
作り込みの奥深さを感じさせる設定情報の出し方やトリッキーなストーリー構成、メタっぽい雰囲気の要素など魅力的。メチャクチャ強い爺さんが無双する展開も水上悟志ファンタジーらしい。
『隙間(3)』(高妍)
沖縄に留学している台湾人の視点から台湾の政情やアイデンティティについて描く物語。
台湾と沖縄、境遇が似ている二つの島での生活や人々との交流を通して主人公が自分を見つめ直すストーリー構成が巧み。モノローグを活用した情緒的な漫画表現も印象的。
『ニシオギ奇譚』(秀良子)
架空の街「ニシオギ」を舞台に現実と地続きの少し不思議な世界を描いたオムニバス。
強烈な異物感のある超常現象が徐々に生活溶け込んで日常の一部になっていくような雰囲気が独特。二段オチのようなお話の構成も最後まで気が抜けなくて面白い。
『スクールバック(5)』(小野寺こころ)
高校に勤める用務員の女性と悩める生徒達との交流を描く物語。
思春期の繊細な少年少女達が描く些細だけど彼らにとっては大きな悩みを現実感ある人間関係の中で丁寧に描いている。作中における理解のない存在としての大人を配置する描き方も印象的。
『怪異と乙女と神隠し(9)』(ぬじま)
スランプに悩むアラサー小説家女性と謎の多い青年が怪異を解き明かしていく物語。
比較的新しい都市伝説に対する独特の解釈とそれを活かしたストーリー構成が魅力的。フェチ要素が強いキャラクタ造形とデザインにも作者の強いこだわりを感じる。
『これ描いて死ね(7)』(とよ田みのる)
漫画を読むのが大好きな少女とその仲間達を描く漫研部が舞台の物語。
巻末で並行して進んでいる新人漫画家エピソードが今回も強烈で、いよいよ本編とリンクしてくる雰囲気も出てきた。高校生達だけでなく挫折した漫画家の再生物語としての軸も熱い。
『100年の経(3)』(赤井千歳)
100年のコールドスリープから目覚めた小説家が文章生成AIが席巻する文学界に挑む物語。
現実の創作に対するAIの活用や規制の議論からも容易に想像できる近未来描写にリアリティがある。主人公が焦りと苦悩から道を踏み外してしまう展開もスリリング。
『撮るに足らない(3)』(二駅ずい)
カップルチャンネルのエロ動画で稼ごうとする恋人未満の大学生二人を描いたラブコメディ。
唐突な見開きでエロシーンを繰り出してくる演出は強烈なインパクトがある。マニアックな男子側の性癖に嫌々言いながら付き合う女子という関係性も良い。
『本なら売るほど(2)』(児島青)
古本屋を営む男性とそこに訪れる様々な人々との交流を描いたオムニバス。
古本というアイテムや古書店の仕事という題材を活かした人間模様やお話の構成が巧みで各話のクオリティが高い。実在書籍のチョイスも素敵でストーリーと上手くリンクしている。
『かわいすぎる人よ!(3)』(綿野マイコ)
素直でしっかり者の少女と容姿端麗で姪っ子を溺愛するおじ、同居する二人を描く物語。
主人公二人がお互いのことをかけがえのない存在であると思っていることが感じ取れる描写に心が温かくなる。周囲の人々との交流も含めて優しい雰囲気に癒される。
『天幕のジャードゥーガル(5)』(トマトスープ)
モンゴル帝国が猛威を振るう12世紀を舞台に奴隷の少女の数奇な運命を描く物語。
キャラクタ達が各々の意思や思想を持って知略を巡らせるストーリー構成がよく練り込まれている。コマ割りや構図を活用したドラマティックな画面演出も素敵。
『傷口と包帯(2)』(七井海星)
弱った人間に性的興奮を感じるヤクザの娘と彼女の世話を任されたヤクザを描くコメディ。
ヒロインのぶっ飛んだ性癖は特異すぎるが妙に巧みな思考の言語化で理解が促されて面白い。急なラブコメ展開の高まりも予想外で今後どう進んでいくか楽しみ。
『ドッグスレッド(5)』(野田サトル)
夢が潰えたフィギュアスケータの少年がアイスホッケーに舞台を移して戦う物語。
アイスホッケーという競技自体の特異性を紹介しつつ、個性的なキャラクタ達を躍動させてストーリーを進めていく構成力が巧み。所々にちらつく暗い要素の活かし方も気になるところ。
『ダイヤモンドの功罪(8)』(平井大橋)
規格外の才能ゆえに野球を楽しむことが許されない少年が主人公の物語。
誰も理解者がいない中で孤立して歪んだ決意を固めてしまった主人公が不憫。唯一、主人公と価値観をともにしていた少年をも振り払い、彼と初めて対決する展開は非常に力強い。
『女甲冑騎士さんとぼく(2)』(ツナミノユウ/青井タイル)
気高い女甲冑騎士とネットに毒されているオタク男性との同居生活を描いたコメディ。
何でもSNSネタにしようとする主人公が気高い女甲冑騎士の姿を見て浄化される、というお決まりパターンが強い。生活の中のふとした要素をネタにする着眼点もユニーク。
『付き合ってあげてもいいかな(14)(完)』(たみふる)
勢いで付き合い始めた大学生二人のすんなりいかない関係を描く百合恋愛物。
ストーリー全体を通した主人公二人の関係性の変化を上手くまとめて綺麗に完結。百合作品ながら恋愛物として普遍的な部分もしっかり描いた良い作品でした。
『鬱ごはん(6)』(施川ユウキ)
フリーターの主人公がネガティブな持論を展開しながら1人で飯を食う物語。
主人公の鬱屈した思考や自身の人生に対する諦観が丁寧に描かれており興味深い。本巻後半のホラーオムニバスからのパラレル世界の自分と向き合うストーリー構成も良くできていた。
『星描けるぼくら』(梨川リサ)
漫画家志望の無職男性と彼の前に突然現れたファンを自称する謎の男性との交流を描く物語。
二つの世界とそれをつなぐ漫画というキーアイテムを上手く絡めたストーリー構成が単巻で綺麗にまとまっていた。主人公二人の奇妙ながら強い関係性も素敵。
『君と宇宙を歩くために(4)』(泥ノ田犬彦)
ヤンキーの少年と転校生のもう一人の少年、「普通」ができない二人を描く物語。
ヤンキー少年が他者と交流する中で自分自身を見つめ直して精神的に成長していくストーリー構成が丁寧。少年達を温かくサポートする大人の描き方も素敵。
『チハヤリスタート!(1)』(たけうちホロウ)
足が速いだけでチヤホヤされていた少女とライバルとなるもう一人の少女を描く陸上物語。
主人公の挫折と再生を描くストーリー構成が非常にドラマティックでお見事。緩急自在なキャラクタ達の表情も感情表現の演出として上手く機能しており熱量がある。
『ドカ食いダイスキ! もちづきさん(2)』(まるよのかもめ)
食欲に抗えず異常なカロリーを摂取する女性の奇行めいた食事風景を描いたコメディ。
各話の冒頭で主人公の理性的な面をみせた後に、理性をはるかに超越する食欲でホラーじみた異常行動を繰り返す姿を描写する構成が強烈。
『チー付与(14)』(業務用餅/kisui/六志麻あさ)
物質を強化する能力を持つ青年と彼が所属する冒険者団体の人々を描くファンタジー作品。
王家の政略争い編で両勢力のキャラクタ配置や主人公パーティのスタンスが今巻でしっかり示されており盛り上がっていく雰囲気。魔物という種族の扱いも気になるところ。